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悪魔も喘ぐ夜
*


「以前に僕のところからファイルを借りて

 行ったでしょう。

 あれを返してもらいにきたんですけど」

「あぁ…あそこ」


 片手で股間を隠したまま体を捻って後方

の本棚を指さす。


「…続き、してもいいんですよ?」

「でっ、出来るわけないだろっ!?」


 ファイルを探す背中がまるで世間話でも

するようにあっさり言うので、思わず叫ん

でしまった。

 何を考えているのかと思う反面、どうや

ら自力では解消できないんじゃないかとい

う不安が込み上げてくる。

 まぁだからといって兄貴の手を借りるな

んて選択肢はあり得ないわけだけど。


「フェロメニアの体液ってさ、中毒性があ

 るって母さんが言ってたじゃん?」

「それが何か?」

「その逆ってないのかな…」

「逆…?どういう意味です?」


 ファイルを見つけてペラペラと捲ってい

た兄貴が怪訝そうな顔でこちらを振り返る。

 俺が何を言いたいのかわからないという

顔だ。


「だから…淫魔の体液って中毒性ないのか

 なって…」


 ゴニョゴニョと声が小さくなってしまっ

たのは決して後ろめたかったからではなく、

今までされてきたことを色々と思い出した

からだ。

 しかしそれが事実であれば自慰で達する

ことができない理由が説明できる。

 けっして俺の自慰が下手なわけではない

…と思う。


「それはわかりません。

 でも生体的にどうということはなかった

 としても、強烈な催淫効果があるわけで

 すから生半可なセックスでは満足できな

 くなる可能性は充分にあるでしょうね」


 うっ、そうか…。

 今まで気づかなかったけど、そういう見

方もあるのか。

 だとしたらもう俺は手遅れなんだろうか、

色々と。

 一人で丸まって悶々としていたら、ベッ

ドの端が軋んだ。

 長い人影の体温が背中に触れて、反射的

に振り返ったら兄貴とバッチリ目が合った。


「で?

 欲しくなったんですか?」

「そ、そんなわけないしっ」


 寝転がったままではろくに首は振れなか

ったが、中途半端だった掛布団を必死で手

繰り寄せる。

 しかしそれで肌を包む前に兄貴の手が肌

に伸びてきた。


「今更隠さなくてもいいでしょう。

 僕の体液がないと満足に自慰もできない

 なら飲ませてあげますよ?」

「だっ、ダメだったらっ!

 そもそも頼んでないしっ」


 なんてことを言うんだと驚いて思わず声

がひっくり返る。

 妙に兄貴の声が嬉しそうなのは…きっと

気のせい。





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あきゅろす。
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