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悪魔も喘ぐ夜
*


「んっ…はぁ」


 じんわりと先端が濡れてくると、それを

全体に擦りつけるように少しずつ伸ばして

いく。

 自慰なんて本当に久しぶりで、我ながら

手の動きがぎこちないと思う。

 それもこれも、今まで兄貴と麗とクロー

ドに好きなだけ精を吸い取られていたせい

だ。

 文字通り精根尽き果てることは何度もあ

ったけど、欲求不満になる暇がなかった。

 嫌だと拒否しても与えられ続けた快楽だ

から、それが幸福なことなのか不幸なこと

なのかは一概には言いきれないけれども。


「んんっ…」


 先走りでぬるぬると滑る高ぶりを、もう

何も考えずに扱く。

 今日一日耐えたことで快楽は深く、達し

てしまうのにも充分な刺激を与えられた…

と思うのに。


「んっ、ふ…っ」


 先走りを溢す股間は扱く度にぐちゅぐち

ゅと濡れた音をたてるのに、擦り続けても

果てる気配はない。

 気持ちいい。

 間違いなく気持ちいいのに、それでも何

かが足りない。

 これ以外に足りないものなんてないはず

なのに、それでも先走りを溢しながらも達

することのない高ぶりを懸命に扱きながら

焦れる。

 解放にもう少しで手が届かない。

 それが切なくて。


「なんでっ…」


 イけないんだよっ。


 続きは熱い吐息に変わって体から出てい

く。

 しかし体の奥の熱は燻ったままで、いつ

イッても構わない状況なのに達することが

できない。

 久しぶりの自慰で手つきがどうとか言い

訳もできない状況だった。


「んっ…」


 先走りを溢して震える股間からそっと手

を離す。

 掌は既にイキたくて零した先走りでぐっ

しょりと震えた。

 それでも、足りない。

 一体何が?


 コンコン


 部屋の静寂を破ったノック音にビクッと

体が震える。


 ガチャ


「おや、帰ってきてたんですか。

 声をかけていかなかったから気づきませ

 んでしたよ」


 返事を待たずに開かれたドアの向こうに

兄貴が立っていた。

 いつもなら返事を待つけれど、無人だと

思ったから返事を待つこともしなかったの

だろう。

 とっさに掛布団の中に飛び込もうとした

んだけど慌てたせいでうまくいかず、今ま

で一心不乱に擦っていた股間に兄貴の視線

がじっと注がれているようで言い訳もでき

ずにそこを掌で隠して背中を丸める。


「何…?」


 気まずいから早く出ていってほしい。

 同じくらいの年頃の男子なら、欲求不満

になれば自慰で解消することも珍しくはな

いと思う。

 でもそれを兄貴に見られるのは気まずい

以上に色々とヤバイ気がする。





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