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悪魔も喘ぐ夜
*


「なぁ、いつになったら答え出してくれる

 ん?

 これ以上我慢し続けるの辛いねんけど」


 近距離から見下ろされて視線の逃げ場が

ないままクロードの視線を受ける。

 切なげに囁かれた声がそれ以外の何かを

含んでいるようで背中を撫でた。

 そんな俺の左手をとって口元に寄せると

リップ音をたてて手の甲にキスされた。


「俺が答えを出すまで待っててくれるって

 言っただろ…」

「だから待ってるやん。

 ほんまやったら今すぐ攫ってしまいたい

 けど」


 掴まれていた右手を解放され、代わりに

指の背で頬を撫でられる。

 鼻先が触れそうなほどクロードの整った

顔が近づいてきて心臓が跳ねた。


「母さんが帰ってくるまで待ってくれ。

 こんな大事なこと、俺一人じゃ決められ

 ない…」

「セシリアが居てなくても駆は分かってる

 やろ?

 俺は駆が望む物を与えられる力を持って

 るし、俺が出来る事なら何でもしたる。

 この上何が不安なん?

 何が足りてへんの?」


 クロードの言い分は何となくわかる。

 きっとクロードはその言葉を実現できる

だけの能力をもっているんだろう。

 今までそういう道を歩いてきて、これか

らも歩み続けられる自信のある者がもつ強

さをもっている。

 だけど…。


「わからない、けど…」


 言葉には上手くできない。

 でもダメだと頭の隅で警報が頑なに鳴り

響く。

 どれほど理屈でそれが最善かもしれない

と思っても最後の一歩を踏み出させない何

かがその答えを拒んでいる。


「母さんが何も考えてないとは思えないか

 ら。

 母さんの考えを聞いてからでも遅くな

 い、と思ってる」

「人間の成人は20歳やろ?

 あと3年ぽっちで大人やんか。

 自分の将来決めるだけやのに、なんでセ

 シリアの許可がいるん?」


 いい加減に自立しろとクロードの目に苛

立ちが浮かぶ。

 いやクロードにしたらそんな理由は言い

訳で、ただ感情の行き場を探していただけ

かもしれない。


「成人とか関係ないだろ。

 家族なんだから相談くらいするよ」


 時間稼ぎだと言われれば反論できないけ

ど判断材料は多い方がいい、絶対。

 今は即答できないし、即答しちゃいけな

いとも思う。

 だからこんな返事しかできない。





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あきゅろす。
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