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悪魔も喘ぐ夜
*


「ま、まだもう少しかかるからっ」


 声が変に上擦った。

 シャワー室に入って鍵をかけてしまえば

安全だと思っていたけれどそうじゃないと

図らずも証明されてしまった。

 クロードの能力は俺が思っていた以上に

色んなことが可能らしい。

 改めて考えたらそれも脅威だ。


「そうなん?

 じゃあここで待っとくわ」

「っ…。

 着替えもあるから、外で待っててくれ」

「どうせ後で全部脱ぐやろうに変なところ

 気にするんやなぁ」


 ドア越しにクロードの楽しげな声が響

く。

 俺は唇を噛んで返事をしなかった。


「まぁ、ええよ。

 その代わり、はようしてや?

 俺、待たされるのは好きやないねん」


 笑い声を残してクロードがあっけなく部

屋を出ていく。

 それでようやく俺は掴んだままのドアか

ら手を離した。

 思ったより力を込めていたのか、それと

も緊張の為か、掴んでいた手が強張ってい

る。

 それを誤魔化すようにシャワーのお湯で

揉み解して、あとはもう何も考えずに頭や

体を洗う事だけに専念した。



 髪を乾かしてシャワールームを出るとそ

のすぐ脇にクロードが壁に背を預けて待っ

ていた。

 どうあっても俺を一人にする気はないら

しいと思って呆れたけれど、クロードが待

っていなかったとしても俺が逃げ出せる理

由などないと思って溜息が出た。

 そのままフロントに向かってカラオケル

ームへ。

 薄暗い室内で大きなモニターがカラオケ

特有のCMを流し続けている。

 あえて部屋の照明には触れないままソフ

ァに腰を下ろすと、後から入ってきたクロ

ードも俺の隣に腰掛けた。

 再び不自然なくらい首筋にクロードの顔

が寄ってきて、また舐められるのかと体が

身構えてしまう。


「シャンプーの匂いしかせぇへんなぁ。

 そないに丁寧に洗わんでもよかったの

 に」


 舐められることなく首筋から顔が離れて

ほっとする。

 が、間をおかずに次の言葉がその口をつ

いて出てきた。


「じゃあチェック始めよか?」


 わかっていたけど体が震えた。

 人目のあるコートで好き勝手されなかっ

ただけでもマシだけど、こうやってシャワ

ーまで浴びて改めて脱げと言われるとそれ

はそれで緊張する。

 暗いとは言ってもモニターの光は強い

し、白い半透明なデザインが施されている

ドアも廊下から覗き込めば中で何をしてい

るかなんて簡単にバレてしまう。

 こんなことなら、さっき脱衣所まで来た

クロードに嫌がらずに体を差し出していれ

ばよかった…と後悔の念に襲われる。

 もう本当に今更だけども。





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