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悪魔も喘ぐ夜
*


『T総合病院。

 3階の327号室や』


 クロードの言葉に思わずバッと後ろを振

り返ってしまった。

 どこかで見られてるんじゃないかと思っ

て。

 それは思い違いだったようだけど、思わ

ず冷や汗をかいてしまった。


 よりにもよって同じ病院って…。

 まぁ同じ地区に住んでいるのだから、可

能性がなかったわけじゃないけれども。

 移動時間を気にしなくていい一方で、運

悪く兄貴とクロードが鉢合わせたら…と考

えると背筋が凍った。


『どないしたん?聞いてるん?』

「あ、うん。ごめん。

 じゃあ今から行くから」

『はよ来てや。待っとるから』


 俺が行くと言っただけでちょっと機嫌が

よくなったのか明るい声を残して通話が切

れた。


「………」


 今更悩むとか迷うとかいう選択肢がない

のは分かってる。

 ただ…なんという巡り合わせだろうとは

思った。

 近場の病院というだけなら他にも何軒か

あるのに、よりにもよってどうして同じ病

院なのか。


 とにかく兄貴にバレちゃまずいよな…。

 クロードのところに顔だけ出すにして

も、兄貴には一言言っておかないと。


 足早に外科の待合スペースに戻ると、ち

ょうど診察室から出てきた兄貴と出くわし

た。


「あ、兄貴。

 診察終わった?」

「いえ、これからレントゲンを撮りにいき

 ます。

 検査を一通り済ませてから診断でしょう

 ね。

 まだまだ時間がかかりますよ。

 下手すると昼を跨ぐかもしれません」


 そういう兄貴の顔は不機嫌だったけど、

俺は内心ホッとしていた。

 兄貴が検査に回されている間にクロード

の所に顔を出す余裕はありそうだ。


「ま、まぁまぁ。

 今ちゃんと調べておいてもらったほうが

 いいよ。

 後から変な後遺症が出てきても怖いし」

「後遺症なんて出るほどの怪我じゃありま

 せんよ。

 あぁ、駆は帰ってていいですよ。

 どうせ待ってるだけで退屈でしょう」

「そんなこと出来るかよ。

 その怪我は俺のせいでもあるんだし…。

 とりあえず検査行ってきて。

 俺はその間に母さんに電話したり、なん

 か食べるもの買ってくるから」





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