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悪魔も喘ぐ夜
*


「あの…ホント、ごめん」

『どうせ謝るんやったら面と向かって謝っ

 てくれへん?

 電話越しに言われてもようわからんし』

「えっ…」

『なんや、口先だけなん?』

「そ、そうじゃないけど…」


 昨日の今日で本当に会いに来いと言うの

だろうか。

 そんなの許してもらえるわけがない。

 そもそもこんなに怒っているクロードの

ところに体一つで行って、無事に帰しても

らえる保証なんてどこにもない。


「きょ、今日はちょっと…。

 明日じゃダメかな?

 それか週明けとか」

『謝る気があるんやったら、今すぐにでも

 来るやろ。

 学校サボってどこにおるんか知らんけ

 ど、あんま舐めた態度とってるとどうな

 っても知らんで?』


 一言一言が重くて、鼓膜を震わせた脅し

文句はドスが効いていた。


“あんなことがあったのに、その約束がそ

 のまま守られるとは思えないよ”


 麗の言葉が今更ながらに蘇る。

 確かにそんな保証はどこにもないんだろ

う。

 クロードはいつだってその鋭い牙を突き

立てられる立場なのだから。

 考えが甘いとさんざん兄貴に言われてき

たけど、クロードに対してもそうだったの

かもしれない。


「…何処に行けばいい?

 学校?それとも、どこかのホテル?」


 観念するしかなかった。

 もしも兄貴がドクターストップで学校を

休んだとしてもきっと自宅療養になるだろ

う。

 麗だって夕方になれば学校から帰ってく

る。

 そして、クロードは自宅の場所を知って

いる。

 もし仮にクロード本人が動かなかったと

しても、カイルや他の人達が動くかもしれ

ない。

 クロードが実力行使して報復しようとす

ればいくらでも手立ては存在する。

 それらを全て阻止するなんて俺にできる

わけがなかった。


 会って、謝るだけ。

 それだけで帰ろう。

 ホントにそれだけだ。


 クロードの怒りも理解できない訳じゃな

い。

 せっかく当人同士で話をつけたはずなの

に、割って入ってきた兄弟に散々な目に遭

わされて、謝罪にも来なかったら誰だって

怒るだろう。

 だからこれは必要な事なのだ。

 それを今からするだけ。

 それだけだ。





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あきゅろす。
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