悪魔も喘ぐ夜
*
「おはよう、乃木(のぎ)。
桐生が死ぬ前にやめてやれ」
「うん?」
静かな加我の声にきょとんとした亮太の
腕が緩む。
その隙に腕に手をかけてぐいぐいと解
し、酸素を吸い込みながら咳き込んだ。
「バカ亮太っ。
もうちょっと加減しろよっ」
軽く涙目になって睨むが再び抱き着かれ
た。
今度は苦しくはなかったけれど。
「久しぶりだったからさー。
ごめんって。な?」
クラスの女子いわくの“わんこスマイ
ル”で頬擦りしてくる。
でもこれは反省してない。うん。
教室に入ってくる女子が亮太に“おはよ
ー、わんこ”と声をかける。
俺に抱き着いたままの亮太がにぱっと笑
いながら“おはよー!”と返しているが、
その頭に記憶力を求めてはいけない。
なにせ4月からこの調子だ。
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