悪魔も喘ぐ夜
*
「…ぅっ、ヒック、ヒック…」
遠くで麗の泣き声がする…。
なんで泣いてるんだ。
早く起きて頭を撫でてやらないと…。
泥に沈んだ重い思考がゆっくりと覚醒に
向かう。
うっすらと目を開くと、眠っているベッ
ドの端に麗が張り付いていた。
「お兄ちゃんっ!?」
涙で濡れる目に俺が映る。
小学生の幼さを残す顔がズイッと近づい
てきた。
「喉痛くない?頭痛いの?熱あるの?」
立て続けの問いにすぐに答えられない。
頭が重くてボーっとする。
風邪をひいて熱を出した時に似ている。
俺、風邪をひいたんだっけ…?
鈍い思考を辿ろうとしたら麗の向こうに
母さんの姿が映った。
「駆、起きたの?
秀から聞いたわ。
風邪ひいて熱っぽいんですって?
今日は学校休む?」
兄貴の名前が出た途端、這うようにして
いた思考に昨日の夜のことが一気にフラッ
シュバックした。
昨日、俺は……。
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