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悪魔も喘ぐ夜
*


 昨日の記憶を辿って、ようやく事の次第

を理解した。

 思わずバッと布団の中を見て、自分がパ

ジャマ姿なのを確認してようやくほっと肩

の力を抜いた。

 ここが兄貴の自室で、兄貴のベッドだと

いう不自然さはあっても、生々しい現場は

麗に見られなかったようだ。

 よかったのか悪かったのか、複雑な心境

ではあるけども。

 時計を見るとすでに昼前を指している。

 兄貴はとっくに講習に行ったのだろう。

 昨日の今日で本当に講習に行くなんて、

どれだけ体力があるのだろうと脱帽する。


 パジャマを着ている肌もベタついていな

い。

 俺が気を失ってから兄貴が拭き清めてく

れたのか…。

 そういう所はマメだよな、昔から…。


 変なところで納得しながらも、先ほどか

ら目の前で黙りこくっている麗が気になり

始めた。


 麗は何を考えて、今俺の隣にいるのだろ

う。


「麗…」


 何か言いたいのに、でも何と声をかけれ

ばいいのかわからなくて、いつもからは考

えられないくらい静かな麗の頬にそっと手

を伸ばした。


 触れた頬はやっぱりあたたかくて、そこ

に確かに麗がいることを俺に実感させた。


「お兄ちゃん…昨日は寝てくれなかったん

 だね…」

「えっ…?」


 不意に麗が口を開いたと思ったら、昨日

の夜のことを指摘されたようで声が震え

た。

 静かな緑の目が俺をじっと見つめてい

る。

 全てを見透かされているようで落ち着か


ない。





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あきゅろす。
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