星屑の煌めき




(無双/Empires)短気損気の我慢比べ根比べ




「ねえねえ、ザビ子〜?」

「なんだ、鮑三娘ほう さんじょう

「アンタいつになったら謀叛すんの?」

「ブハーーーー!!??」

「うっわ、きったない!! ちょ、アンタ普通に汚いんですけど!?」

「ゲホゲホ、クソ、気管に入っちまった……!!
ごほん……良いか三娘、わたしはこの国の大将にそれなりの恩もある。
だから、謀叛なんて起こさない……筈、たぶん」

「えー? だってアンタあたし引き抜く時『わたしがいずれ盗る天下の形、お前に見せてやろう』って言ったじゃん、看板に偽りありィ?」

「おいちょっと待て。……私、そんな事言ったか?」

「言った、証人もいるよ?」

「っぅえ、同じ時期に引き抜いた人なんていないだろ!?」

「なに馬鹿言ってんの? 軍師さんもその場にいたし」

「ふぁっ!? り、陸遜りくそんがその場にいたァ……!?」

「うん、確認する? あたしは別に構わないケド?」

「イヤだ確認したくない怖いあの笑顔が今は殊更怖く見えるイヤダ」

「あっははー、アンタ大胆な癖にそーゆー時案外ちっちゃいよね〜。
あたし、アンタのそんなトコ嫌いじゃないし」

「……なんか素直に礼を言いたくない。素直に受け入れたくない。
嘘だー、これから定刻軍事会議なのに陸遜と顔合わせづらー……」

「もぉ〜、しっかりしてよ、大都督ゥ?」

「お前の所為だろうが!! ……うわぁぁぁ軍議休みたいぃぃぃぃぃぃ」

「────────失礼します、陸伯言りく はくげんです。ザビ子殿は在室されていますでしょうか?」

「ヒッ……!! ……居、ます」

「そろそろ軍議が始まりますので、支度の方を整えて広間までご足労願えますか?」

「分かった。すぐに向かう」

「……もー、腹括りなよォザビ子?」

「……分かってるよ三娘、わたしも兵士の端くれ、我侭なんて許されん」

「……あたし、アンタのそーゆー極端に物分かり良いトコ、結構好きだよ?
ま、せいぜい頑張ってきてね〜、あたし達はアンタ等が決めた事に従うだけだから」





◇ ◇ ◇






「すまん、待たせたな陸遜。曹操そうそう殿はもう広間へ?」

「いいえ。まだ雑務室に籠もられているようです。細やかな方針を決めているのでしょう」

「そうか。なら早く行った方が得策、というわけでもなしか。
ふむ……雑務室で大まかな指針を立てられているとなると、今回はわたしの案は採用されんな」

「そうなのですか? その結論に至るには少し早計かと思われますが……」

「いや、曹操殿が雑務室に籠もる時は大抵自軍の現状を調べている。
そんな時は大体富国強兵やら他国と共闘し敵国を威嚇する。
となると、わたしの国土を広める為の侵略戦は相性が悪いだろう」

「成る程、言われてみれば確かに今までの曹操殿を振り返ってみると、内政改革に取り組んでいますね。
その冷静な判断力と分析能力、流石ですねザビ子殿!」

「そう褒められたモンでもない。わたしはただ────酷く、臆病なだけだ」

「しかし、そんなザビ子殿だからこそ気付ける事もあるんじゃないですか?」

「そうだろうか?」

「はい、きっとそれにあなた自身ですら気付いていないだけです。
細やかな注意を払い、常に周りを警戒し目を光らせているという事は些細な変化も見逃さない。
……謀反の動きにも、いち早く気取れるという意味ですからね?」

「っ────────……。″軍師″殿、それはいかような意味ですかな?」

「いえ、他意はありません。……そのままの意味ですよザビ子殿?」

「…………。ふん────とっくにお見通し、という訳だな。まあ、お前に隠した所ですぐに暴かれるのがオチだろう。
そうだな、お前の言う通り────わたしは近々謀反を起こすだろう」

「────」

「こうも性急に国土を広めようとしていたのは楽して天下を手中に治めたいが為。
わまし直属の軍を編隊したのだって、曹操軍と互角以上に張り合う為。
従順な振りをしたのも、この便利な地位に就きたいが為。
どうだ陸遜、この国の軍師として今のわたしの発言は見過ごせんだろ?
今この場で殺すか? それとも────曹操に差し出すか?」

「────なにを仰いますかザビ子殿。
あなたが謀反人であることなんか、とっくに気付いてましたよ。
あなたから引き抜かれたその日にはもう、分かっていた事です」

「……あー、やはり三娘の言う通り、お前もあの場に居たというのは本当らしいな。
ったく、なんと滑稽な。わたしはまんまとお前の掌中で踊らされていた訳か」

「いえまさか、むしろその逆です。私が泳がされていたんですよ」

「……どういう意味だそれは」

「気付いていながら、私はあなたを放置していた。
いえ、それどころかあなたの策に乗っていました。
曹操殿に他国を侵略せとよ進言したのは、軍師であるこの私なのですから」

「そうか……言われてみれば、お前は気付いていたのにわたしを泳がせていたな。
何故だ。確固たる物証がなければわたしを排除出来ないからか?」

「……ザビ子殿、それはわざと仰っているんですか?」

「なんだ。そのあからさまに人を馬鹿にするような眼差しは。止めろ。癪に障る。
おいなんだその心底残念そうなモノを見る目つきは、なんだその顔。止めろ」

「まあそれは追々分かる時が来ますかね。
ところでザビ子殿。此度の戦、参戦なさるので?」

「話題変えるの下手だなお前。
……襲撃を受けているのはわたしの生家である地域だから、まあ赴きはするが戦場で剣を執る事はないだろう。曹操殿がそれを渋る」

「そうですか。分かりました。ソレを踏まえて布陣展開しておきますね」

「うむ。夏侯淵かこうえん殿を連れ出したいのでその旨忘れてくれるな、彼をわたしの傘下に加えたい」

「承知しました。それを軸に私の独断と偏見で軍を編成しますね」

「わたしの意見は無視って意味だなそれは」








































敵はすぐそばに。
陸遜てばマジ独占欲強すぎー。
ザビ子を自分のモノにしたいっての、態度に出てるんですけど?
ま、あたしは関係ないからほっとくけどねー?








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