星屑の煌めき




(Fate/赤セイバー)毒を以て華を咲かす




「っあーぁ……たく、諜報活動も楽じゃねえな、暇だ……。
んん────ありゃあセイバーのマスターじゃないか?
よお、セイバーのマスター。教会前でなにしてんだ?」

「その軽薄な声は……ダン卿のアーチャーか」

「あり、アンタんとこのお姫様はどこ行ったんだ? いつもならオレがアンタに近付こうものなら一刀両断みたいに噛みついてきやがるのに、姿が見えねえな」

「セイバーは今マイルームにて休憩中だ。起こすのも忍びないから自分は散策がてら、情報収集聞 き 込 みに来ている。
そういうアーチャーも、ダン卿マスターはどうした」

「オレんとこもアンタと一緒でさ。サーの旦那も情報収集に躍起になってるぜ?
オレはもっぱら、アンタの隙を衝いて殺そうと思案中だ」

「そうか。しかし、殺す気なら、さっき声をかけなければ良かったじゃないか。
今の自分はサーヴァントセ イ バ ーも連れずに歩いている、言わば自殺行為をやっている最中だ。
狩人アーチャーがその気になれば、今の自分はいとも簡単に暗殺出来たはずだ、何故、それをしなかった」

「おっと、なかなかに痛いとこ突くじゃねーか。
可愛い顔して中身は強かってか? あーぁ、これだから女ってやつァ怖いな。
校内での私闘はするなって旦那に言われてんだよ、破った場合は即令呪使うって脅されてよー、仕方なしだ仕方なし」

「……。この単独行動をダン卿は知っているのか」

「いンや、うちんとこは完璧に個人の自由プライベート主義だし、多分学園内でこれ以上騒ぎ起こすとペナルティーとかこえぇし、学園内では騒ぎ起こさねえよ、安心しろセイバーのマスター」

「学園内では、騒ぎを起こさないということは、アリーナ内でなら騒ぎ起こす気なのか」

「あららバレた。ま、それもやるにしたって、アンタんとこのちんまいのがそれをさせねーだろうし、オレも正直これ以上ペナられっと困るしな」

「随分とまあ、勝手な都合だな、それは」

「まあ、本来ならオレは暗殺とかの方が得意だしな。
それ言ったら、そっちのお姫様が威嚇してきたけどよ」

「セイバーはセイバーでなにか思うところがあったんだろう。
自分にはそれがなにか分からないが、セイバーの考えはセイバーだけのモノだ。
それをこちらが推し量ろうなんて下策だし、不粋というものではないだろうか」

「おやおや、随分とまあサーヴァント想いのマスターだこと。羨ましいねぇ、うちの旦那ととっかえてもらいてぇよホンット!
オレの唯一の取り柄を取ったらこのハンサムな顔だけだっての、なあ、そう思わねえかセイバーのマスター」

「────中身が残念だから、自分からはなんとも」

「おま、そこは乗っかるトコだろ普通!? ったく、アンタ、ノリが良いんだか悪いんだかわかんねーな」

「自分はそんなに分かりにくいだろうか?」

「あァ? ……いや、アンタは顔に考えてる事が出るから、分かりやすいと思うが」

「そうか。自分ではもっと複雑な人間だと思っていたが、そんな事はなかったのか」

「ま、素直って美徳じゃね? オレにゃ無いもんだしな」

「ふむ────ところでアーチャー、こんな所で道草食っている場合なのか?
事と次第によってはまたダン卿の指針と離れて令呪を使われかねないぞ」

「おぉっといけねぇ、言われてみりゃ確かにそうだ。アンタ話しやすいんでつい長居しちまった。
じゃあなセイバーのマスター、せいぜい闇夜の晩にゃ気ィつけるこったな────!!」

「……。最後のは彼なりの忠告、だったのだろうか。
然し自分もこうしていても仕方ない、マイルームに戻るとするか────」





◇ ◇ ◇






「────奏者よ、どこへ行っておったのだ!!」

「うわ、セイバーさん起きてらしたんですか」

「当たり前ではないか、余のマスターが何処かへ行ったのだぞ!?
目覚めぬわけがなかろう、そなたどこへ行っておったのだ、事と返答によっては余は泣くぞ!?」

「すまんセイバー、あの、取り敢えず泣かないで下さい」

「奏者が素直に吐かぬ限り、余は人目をはばからずに泣くからな……!!」

「分かった話す、話すから!! 頼むから泣かないで下さい。
そんな後ろめたいモノはないし、セイバーが心配する事でもない。
────────ちょっと情報集めをしていただけだ」

「情報集め、とな。ふむ、そうか。それは良い心がけよな奏者よ。
だが、サーヴァントたる余をともにせぬとは、そなた、聖杯戦争を生き残る気はあるのか?」

「凄くごめんなさい。猛省しています、平にご勘弁下さい皇帝様。
自分でも驚くほどの浅慮だったと、今なら思う。
セイバーに心配かけてしまったと、心の底から反省しております」

「…………本当に反省しておるのか?」

「それはもう、海よりも深く、ムーンセルより青く反省しております」

「……仕方あるまい、此度の不逞はそなたの反省に免じて許そう。
しかし、しかしだ奏者よ。もし次この様な単独行動をしたら、余は泣きながら校内を徘徊するぞ」

「それは勘弁したい。セイバーの為にも自分の名誉の為にも、それだけは回避したい」

「うむ。分かれば良いのだ。そなたの体はもうそなただけのモノではない。それを骨身の随まで理解しておくがよい。
しかしだ、余を置いてまで情報集めをしていたのだ、何か有益な情報は掴めたか?」

「それはもう、バッチリだ」

「ほう、ならば余にもその情報を教えよ。共有してこその情報だぞ奏者よ」

「まず、アーチャーとダン卿は相性が頗る悪い。
アーチャーは陰から狙撃するのに対して、ダン卿は真っ向勝負をするタイプ。
この辺はこの前のアリーナで分かった事だが今日改めて痛感した、マスターとの相性は大事だな。
あとは、アーチャーがセイバーの事を『お姫様』や『ちんまい』と呼ぶな」

「────奏者よ……」

「な、なんでしょうか、セイバーさん」

「そなた────真面目に勝負集めをしていなかったではないかーーーー!!!!
そんな事は前々から知っておる、今日新たに得た情報はないのか!!??」

「し、強いて言うならアーチャーはフェミニストを気取った二枚目キャラだというのが分かりました。
今日話した感じ、なんか軽薄っぽいと言うか、そんな人でした。
自分にはこれだけしか分かりませんでした、申し訳ないです」

「不甲斐ない、余は不甲斐ないぞ奏者よ!!
そなた、サーヴァントを伴なわずウロウロした挙げ句の果てには敵サーヴァントと邂逅していただと……!!??
余は、余は悲しみと怒りで消えてしまいそうだぞ奏者よ!!!!」

「本当にごめんなさい反省してます!!」

「っ……まあ、よい。今回は大事に至らなかったという点もあるし、そなたのその反省ぶりを及第点としよう。
本当になにもなくて良かった……そなたにもし万が一という事があったら、余は不安で……」

「いや……本当にすまなかったセイバー、自分でも軽率だったと思う。
もうこんな危険な行動はしないと誓う、今後セイバーを心配させるような事はしない」

「奏者……うむ、分かってくれたのなら良い。
では奏者よ、仲直りの証としてアリーナ探索へ参ろう、まだ暗号鍵トリガーも取れていない筈であろう?
猶予期間モラトリアムもそう残っていまい、早急に取りにゆくぞ!!」

「ああ、そうだな。────うむ、セイバーがご機嫌そうでなによりだ」





































当て馬か? オレは結局当て馬なんか!?
「大丈夫だアーチャー。お前にはその結構な面構えがあるだろう」
「旦那それ慰みにもなってねえよ」























◆ ◆ ◆












































←前

次→


270/329ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!