星屑の煌めき
(ミスフル/芭唐)甘い言ノ葉御用心
「おっ昼だおっ昼ーっと、華武高の屋上はこのザビ子が貸し切っ────あれ……」
「残念だったっスね〜ザビ子先輩、俺が最初っス」
「御柳くん……なんだ、先客として居るなら居るって言ってくれ、私の恥ずかしい独り言が筒抜けではないか」
「あれ独り言なんスか、随分盛大な独り言っスね……てかザビ子先輩って昼飯弁当派でしたっけ?」
「いや、いつもは学食派。今日は朝から機嫌が良いので弁当作ってみたのさ。
教室も講堂も人で溢れかえっていて、人があまり居ないトコ目指して屋上に来たら、このザマだ」
「……悪かったっスね。つーかこの場合俺悪くねえっスよ、最初にいたの俺っスもん!」
「まあそうなんだがねぇ。……しょーがない、中庭辺りに移動するか。
じゃあね御柳くん、優雅な昼食タイムを邪魔したな」
「あ、待って下さいザビ子先輩!!」
「?」
「ここ、あんま人来ないし、昼飯ここで食ったらどっスか?」
「……良いのか? 御柳くんは私が居ても邪魔にならないか?」
「寧ろザビ子先輩なら大歓迎っスよ」
「それは嬉しい事を言ってくれるね御柳くん。それではお言葉に甘えて邪魔するよ」
「ザビ子先輩って屋上来たのって何回目ぐらいッスか?」
「……ふむ、言われてみれば化学の授業で来たぐらいだな、あまり私には馴染み無い場所ではある」
「なら、折角っスからあそこまで行きません?」
「あそこって……君の指差す方向を辿ると────────貯水タンク、だよね?」
「当たりっ。どっスか? かなりオススメなんスけど、誰か来ても見えないんで、なにかに気兼ねする事なく昼飯突っつく事が出来るっスよ」
「ふむ。行った事もないし、ここは一つ君の意見に賛同しよう。
案内してくれるかな、御柳くん?」
「任して下さいよザビ子先輩、俺こー見えてエスコートは上手いんスよ」
「ふふ、見たまんまだな────へえ。ハシゴがあるのか」
「屋上の扉の真上にあるから結構死角だったりして穴場なんスよ〜、ザビ子先輩、手だして」
「ああ。ふむ、なかなか慣れている手付きを見ると本当に女性慣れしているな……よっと」
「はい。ザビ子先輩お一人ご招待♪」
「う────────────わぁ・・・。
凄い、絶景だ……」
「俺いっつも部活とか授業とかサボる時、ここに昼寝しにきてるんスよ。いい眺めっしょ?」
「御柳くん、君、なんとかと煙は高い所が好きって諺知ってるかね」
「こっからザビ子先輩の弁当投げ捨てますよ?」
「屑桐くんに君の秘密をバラしても良い、という解釈で受け取ってもいいのかな?」
「……ククク。ザビ子先輩ってホンット面白ェっスね。
ま、そんな事はどうでもいいんで、さっさと飯片付けたらどうっスか?」
「そうだな。いや然し、君の昼食は菓子パンだけなのか?
栄養学的に考えて君はもう少し野菜と肉を食べるべきだ。ほら私の昼食を少し分けてやる」
「マジっすか、ゴチになりまっス!」
「代わりと言ってはなんだが────食後のデザートとして、ガムを貰いたいのだが」
「ガムッスか? 別に構わねーっスけど……ちょっと待って下さい」
「うむ。弁当の蓋を皿の代わりに使うが、文句言わないでくれよ」
「うっす…………あ、すんませんザビ子先輩、俺が今食べてるので最後みたいっス……ホント申し訳ないっス」
「……なんだ。そうか、なら仕方ない、ガムはまた今度貰い受けるよ。
まあそれより今は君の健康管理について話を進めたい。
野球部のハードな練習に加え君は四番バッターなのだからもう少し肉類を────……」
「そうだ。────ザビ子先輩ザビ子先輩、ちょっとこっち向いて」
「? なんだ御柳くん、君今私の話聞い────────っ」
「────────っは……ガム、行きました?」
「…………きたな。ガム」
「なら良かった。これで貸し借りなしっスね?」
「…………ないが……その、御柳くん、君今なにした」
「ザビ子先輩にガムをあげました」
「違う、いやそうだが結果を聞いてるんじゃなくて、経緯を聞いてるんだが」
「口移しっス、もしくはキスってやつですね。あれ、もしかしてザビ子先輩今のが初めてとか?」
「…………御柳くん。君はホントに遊び慣れしているな、ここで私のとる行動として正しいのは『軽蔑』で間違いないのかな」
「やだなー、俺はザビ子先輩だからやったまでっスよ〜?
他の女にゃしねーよ、こーゆーのは本気で好きな相手にしかやらねー主義なんで、俺」
「…………ガム、確かに受け取った……それと君のよく分からん告白擬きも……受け取った……」
「返事はくれるんスか? ────────ま、その真っ赤な顔見りゃアレだけど、な」
「順序が逆だろ、普通…………告白して了承を得て、初めてそこでキスをするもんじゃないのか、普通」
「じゃあザビ子先輩。好きです、俺と付き合って下さい?」
「……あまり軽はずみな行動を控えてくれるなら、了承してやらなくもない」
「じゃあザビ子先輩、キスしても良いっスか?」
「昼食を食べ終えて部活も終わって帰り私の買い物に付き合って自宅に帰って一晩休んでそれからだ」
「回りくどっ、それって要するに明日って事じゃないっスか」
「も、限界だ……今の一回でこんなに死にそうなのにもう一回したら私は死んでしまう……。
だ、だから一旦心を落ち着かせてからの方が有り難いんだが」
「んなの、俺が待てねーっすよザビ子先輩────────今なら誰も居ねーし誰にも見えない。
大丈夫だって、俺けっこーテクニシャンなんスよ……」
「いやだからそのちょっと待っ────────」
「待てない。寧ろ今まで我慢してきたんだから、別に構わねーだろ?」
「ん……っ! ま、待っ……て、ホントに心臓痛いん、だが、殺す気かっ!!??」
「良いんじゃねーの? “死因・俺とのキスし過ぎにて”ってのも悪くねーし?」
「…………バカだろ、君は。もう昼休みは終わるぞ」
「大丈夫、俺午後サボるから♪」
「私は授業に出たいんだが!?
ちょ、真面目にっ…………屑桐くんに言い付けるぞ君のサボり場ーーーー!!!!」
私の死因は、あなた?
「おっはよーザビ子さん(^∀^)ノ
ありり? 随分顔真っ赤だけど、どした気〜?」
「なんでもない朱牡丹くんおはよう。
それより御柳くんの練習量を十倍に増やせって監督と屑桐くんに伝えてくれ!!!」
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