「こんにちはー」
「あ。ザビ子さん、お早う御座います。
珍しいですね、ザビ子さんが平日の昼間に来るのって」
「それはどういう意味だい新八くん。それじゃあまるで私が引き籠もりみたいな言い方じゃないか」
「すいません、他意はないっす! ただ素直にそう思っただけっす!」
「軽く凄んだだけじゃないか、そんなに縮こまらなくても良いのに。然し、新八くんは反応が好いからからかい甲斐がある」
「ザビ子パイセンの眼力パネェっす、マジ怖ぇっす!」
「そんな事より────今朝は誰もいないのか?」
「ちょっと前まで神楽ちゃんがいましたけど、今さっき定春の散歩に出掛けていきました。
銀さんは例によって例の如く、朝帰りです」
「あのやろ……っ! 思春期の子供がいるってのに何考えてやがるんだ……!
帰って来たらボッコボコにしてやる……悪いな新八くん、あんなまるで駄目な大人、略してマダオの世話を君に任しっきりで」
「あはは、もう慣れましたよ」
「本当に君は良い嫁になれる。よし、新八くん、私の嫁になりなさい」
「えっ、ちょ、よ、嫁ってザビ子さんそれはっ……いやそれよりもなんで男である僕が嫁なんですか普通逆じゃないんですか!?」
「ナイス、ナイスバッティング」
「なんも打ってねーよ!!」
「ま、新八くんをからかうのはこれくらいにして。本題に移りますよ」
「ザビ子さん僕思うんですがザビ子さんも立派なまるでダメな大人略してマダオです、正直銀さんより遥かに質悪いです」
「君達に渡したいものがあって今日は早起きして来たんだ。
新八くん、これを受け取って貰えんだろうかね?」
「? なんですか?」
「じゃんじゃじゃーん。ザビ子さんお手製、手作りチョコを万事屋の面々にプレゼントっ」
「え! ザビ子さんの手作りチョコですか!?」
「因みに。カカオを作っている土地から製造加工工場ミルクやら他の原材料からなにからなんまで権利を買い占めて君達だけの為に特別に作らせたチョコです。
従業員は寝ずに働きづめで作らせたチョコです、彼らの血と汗と涙で出来たチョコ、味わって食べなさい」
「一気に有り難さがダウンするようなコメントは控えてくれませんか、あとアンタなに非道徳的な事やってんだ」
「ま、そんな冗談は置いといて」
「どっからどこまでが冗談なんですか、事によっちゃ真選組が出張りますよ」
「大丈夫、私はアイツ等のもっとやばい秘密を握ってるからンなヘマはしないのさー。
はいこれ神楽の分、んでこれが銀時の分、そしてこれが君の分のチョコだ。受け取ってくれ」
「……有り難う御座います。なんだかイマイチ素直に喜べないですけど」
「素直に私の愛を受け取りなさい新八く〜ん?
この青いリボンでラッピングしてあるのが君のだよ。
んで。赤いリボンでラッピングしてあるのが神楽の分。
白いリボンでラッピングしてあるのが銀さんの。
なので、間違えたり奪われたりしないよーに。オーバー?」
「分かりました。……随分と手が込んでますねぇ、個別包装って、手間暇かけてますね」
「あははは、その辺は私の皆に対する愛の成せる技ってか。
今年は特に本命がいたりしたから特に気合い入っちゃったしな」
「…………へえ。そう、ですか」
「今年は頑張ったから味わって食べてくれっ。特に君のは誰もいない時に食べた方が良いぞ」
「そうします────実はですね、僕もザビ子さんに渡したいものがあるんです……」
「うを? なんだい新八くん、そんな改まって?」
「あの…………これ、なんですけど…受け取ってもらえないでしょうか…?」
「────────花? 随分と愛らしい花だわね、これを私にくれんの?」
「…………はい」
「なんでまた。確かに花は好きだけど……花鳥風月を慈しむ心は侍の生き様だしー」
「とにかくです。その花をザビ子さんに差し上げます…………僕からの、バレンタインです」
「? よく意味は分からないが、貰った分には礼をせねばなー。
有り難う新八くん。美しいな、然しこの時期にチューリップなんて咲いてるんか?」
「天人の技術で育てた温室花みたいで、一年中咲かす事が出来るみたいです。
────チューリップ、可愛いですよねっ」
「うむうむ。可愛いものよなぁ、だけん私みたいな粗野な奴にくれてやなくても別に良い気がするが、例えばきみの好きなお通とか?」
「ザビ子さんとお通ちゃんは違います、だからそれはザビ子さんに差し上げるんです。
意味は、分からなくてもいいですから……分かると微妙に嬉しいですけど」
「? なんだか妙な感じだけど、有り難く受け取っておくさあー。
赤いチューリップ────綺麗だな」
赤いチューリップの花言葉。『愛の告白、真面目な愛』
「ただいまアル! あ、ザビ子良いトコに! はいこれザビ子にあげるネ!」
「うわぉ、お帰り神楽……なんだコレ、ヒヤシンス?」
「えへへ、ザビ子にプレゼントアル! 後で花言葉辞書引くコト勧めるヨ! ……駄眼鏡だけに良い恰好しぃはさせないアル」
「…………ぐ、まさか神楽ちゃんまでこの方法でザビ子さんを落とそうとするとは……!」
「お〜いザビ子〜、銀さんからもこれをやる」
「なんだ、お前もか銀時……えーとこれは、ラナンキュラス? これまた随分とマイナーな花だな……綺麗だけど」
「銀さんまでっ……!? く、この家はライバルが多すぎる……!」
2/14 Happy St.Valentine's day!!
ヒヤシンス、花言葉は『淑やかな可愛らしさ』
ラナンキュラス、花言葉は『貴方は魅力に満ちている』