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極楽蝶華
嫌だ、けど……
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「ホラ、ぎゅうしたるから機嫌直せよ。」


『……。』



肯定も否定もせず、ゆっくりと頭を下げてその細い肩に額を押し付けた。


ぐぃ、と擦り寄ると滑らかな髪の毛が俺の顔を撫でてほつれるのが判る。



「……俺の猫は、レオだけ、だよ。」



言葉じゃ、言葉なんかじゃ、足りない……



だって、ユウは昼間もそう言ったじゃん。

ユウの猫、俺だけだって言ったのに。



……言ったのに。




「……俺の猫はレオだけだよ。レオが猫の1番だよ。」



……言ってた、のに。






「……いい加減離れろテメェ。」


「わっ……」



横から無理矢理捩込まれた腕が俺とユウの間に割って入った。


下から睨み上げた視線が絡んで、頭の底が、疼く。



さっきユウを膝に乗せて厭味たらたら笑ってた顔が浮かんだ。





「俊、ちょっと待って。
コイツ宥めちゃうから。」



がんじがらめにされてた脳みそが、唯一ユウの声を拾った。


細い指が掴んだ会長のシャツが押しやられて、腕ごと離れていく。

それが俺の髪の毛に搦められて、やっと俺の心臓は正常に動き出した。



『……ユウ……。』


「猫……お前以外飼わないから、……な?
俺の猫はお前だけって言ったろ?分かってるよな?」



『……うん。』


「そか。
イイコイイコ。」




ぐりぐり、と撫でられた頭に漸く落ち着いた。






「なら、待ってられるよな?」

『……え?』


「ちゃんと、俺はお前以外猫は飼わないし、レオが1番だし。
……ちょっとくらい、他の猫触ってもいいよな?」





嫌だ、よ。



「他の猫レオより可愛がったりしねぇよ?レオが1番だよ?」




嫌だ、嫌だ。



「レオはイイコだから、待ってられるよな?」



ユウが、俺以外の猫……その手で……俺の大好きな手で触って、撫でて……


やだよ。


俺だけ撫でてよ。






『……うん。待ってる。』

でも、ユウは、それを望んでるの……?



「だよな。イイコ。」




最後にふにふに、と喉を掠めた指が

そのまま離れて




ユウは、また寮の通用口近くにいる猫の元へ走っていってしまった。

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あきゅろす。
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