極楽蝶華 嘘付いて □■□■□■□■□■□■ 待っている間はイライラしっぱなしだった。 ―ガチャッ― 横に村上の控える扉から出て来た久遠先輩。……顔ニヤケてる。クソむかつく。 「あ、ヤバイ。可愛スギ。」 ぶつぶつ何か言っているし。 幸せそうだし。 あーもー……ウゼェ。 「テメェ……何してやがった」 「悠紀仁の可愛さにメロメロになってた。 手は出してないよ。かなり我慢したから。」 あー、でも可愛かったなぁ、とか言っているその顔が幸せそうで……やっぱ凄いムカついた。 『……それで、許してくれたんすか。』 「……うん……悠紀仁、怒ってるんじゃなくて傷付いてたよ。」 傷付いてる その言葉にギュル、と胸が痛んだ。 『俺、次。』 言うより早く立ち上がって走り出して 背後に迫る足音に構わず、ドアのノブを掴んで勢いのまま中に飛び込んだ。 急いで閉めた扉に、乱暴なノックが響く 音に驚いて、悠紀仁が顔を上げた。 その目は潤んでいて真っ赤で 「……不動……」 急いた気に、足早に近付いて飛び付くように隣に座った 高級な革張りが少し沈んで、悠紀仁が少し身構える。 『悠紀仁……』 隣にいる華奢な身体を抱きしめた。 薄い肩は震えてて、俺は、このまま手を背中に回していいのか少しためらった。 怯えさせたのは、俺なのに。 『嘘ついて、ゴメン。』 肩に顔を埋めて、それだけ呟いた。 シャツの裾が引っ張られる感触に、悠紀仁が触れてきてくれたのを感じて泣きそうになった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |