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極楽蝶華
ごめんね?
 

生徒会長室のソファに座る悠紀仁。

隣に腰掛けたとき、その肩が怯えたように少し跳ねた。



『逃げないで。』

「…………」


場所をずれようとする腰を抱き寄せて、もう片腕を背中に回して抱きしめた。


「……何であんな嘘、ついたんですか……?」


『ごめんね……』


抱えてたおでこに口付けて、小さく呟いた。


『……抱っこしていい?』

俯いたまま、反応が無いのを拒否する意思が無いと見て脇に手を入れて持ち上げて横向きに膝の間に落とす。


『嘘ついた理由、だっけ?』

「……。」


無言で頷く悠紀仁。

耳たぶに唇をくっつけて、意識して吐息で囁くように声を注ぎ込んだ。


『悠紀仁が……可愛すぎたからだよ。』

「……ふざけんの、やめてください……」

『全然ふざけてない。』

腕の中で小さい抵抗を見せる悠紀仁を、力を入れて抱き締めた。


『悠紀仁が可愛くて、好きで、愛しくて、嘘でも騙してでもキスしたかったんだよ。』

「……何でそんな、……男とキスしたいんですか?」

『前にも言ったでしょ?
僕は悠紀仁だから、キスしたいんだよ。』


悠紀仁の顔が一気に赤くなった。

抱き締める腕にも鼓動が伝わって来そうだ。



『悠紀仁は、嫌だった?』


耳に掠めるくらいの距離に顔を近づけて、囁いた。



『……僕とキスするの。』


薄い肩がぴくん、と震えて頭がさらに垂れ下がった。

……濡れたままの髪の毛から、雫が垂れて落ちるのをただ見つめていた。


必死に隠しているが、指先が震える。

今、死刑宣告を待ってる気分だ。


「……嫌じゃ……無かった。」



すごい、小さい小さい声だったけど微かに響いた空気の振動は、消え入る前に僕の鼓膜に届いた。

『……スゴイ嬉しい。』


握り締めて真っ赤になった手にキスを落として、もう一度抱き締めた。

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