極楽蝶華
少々早計だった、か……?
「でもマジ助かりますよー。ありがとうございます。
毎度毎度兄貴と奈緒さん達にこき使われてリアルにキツかったんですよね。今年は中等部の生徒会長の仕事も兼務だったもんで。
ホントありがとうございます。」
ほーっ、と心底嬉しそうに言われて少しだけ後悔の念が沸き上がって来た。
『……え、そんなに辛いの?生徒会の仕事。』
「辛いとか、難しいって言うより単純に量が多いんですよ。
でも、3人も増えてくれるんなら大分作業楽になると思いますよ?
悠紀仁さんが皆がサボらないように監督してくれるみたいだし、仕事のスピードは今までより格段に速くなると思いますよ。
元々生徒会には“生徒会役員補佐”って、手伝いに一人ずつつけても良いことになってますし、役員になって目立つのが嫌ならそれでもいいですよ?
そっちなら公示なしの委員会と職員への通達のみで就任できますし。どっちにしろ時給つけること出来ますから、ね?」
だから、是非とも生徒会入りしてください!
と、熱く語られて断る機会を失ってしまった。
『えーと、じゃあ、前向きに「そうですか!ありがとうございます!」
考えておく、と言う前に逃げ道を途中で断たれて
思わず二の句を飲み込んでしまった。
……え、……?
「まぁ……俺は1時間5000円で生徒会の仕事から逃れられるんなら……払っちゃいますけどね。」
金銭感覚がおかしいだけだと思いたい。
中等部の生徒会長が真顔でぽつりと小さく呟いて、胸ポケットから通話状態の携帯電話を取り出した。
(恐らく、そのマイクに拾われないような声の大きさにしたのだろう。意図的に。)
画面に表示されている名前は、あぁ、予想はある程度していたけれど。
[ごめんね?言質取るような真似しちゃって。
まぁ、補佐として入ってもらえば構わないし、勉強と部活の時間には影響でないようにしてあげるから、ね?]
確かに、時給に惹かれたのは俺達ですけれど。
携帯電話から漏れてくる声の主に、さっき出て行ったはずじゃと少し恨めしげに透君の方に視線をやった。
スイマセン、とでも言いたげなその顔に“あぁ、あらかじめある程度打ち合わせ済みか”と事の次第を察した。
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