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極楽蝶華
略取
 


生徒会役員専用フロア直通のエレベーターの中に、その歳にしては……いや、男にしては華奢過ぎる身体と、それを軽々と抱き上げている男が入って来た。


その腕は、必要以上と思えるほど優しい。


噛み付いたのは、傷付けたのは、首を締めたのは同じ人間なのに。

自分を抑え切れず水の中に押し倒して口付けを貪った、今はその事を悔いているのか。

不器用だとは、気付いていた。分かっている。
でも、どう接したらいいか解らない。


俊は廊下で眠り込んでいた悠紀仁を抱え上げ、自室に行く途中だった。


ふと、唇や瞼の辺りを見ていた視線を下へと降ろしてみた。


――華奢な細い身体――


力を入れたら砕けてしまいそうだ……




『……顔が赤い……』


独り確認のように呟いた。


顔だけではない。

口から漏れる呼吸は苦しそうで、
腕から伝わる体温も尋常のそれでは無かった。



身体が異常を感じて普段より増えている血流。

それが、色素の少ない肌の下で……

……皮膚の薄い頬や耳、鎖骨周りを桜色に染めていた。 





少し考え事をした後、上半身を支える右腕を少し持ち上げ、薄く開かれた唇に触れるだけの口付けをした。



自分の付けたまだ塞がっていない傷痕が熱く火照っていて……


自分の顔にかかる吐息のくすぐったさが抱きしめたくなる程幸せだった。




唇が離れた後も残る熱は、肌を経由して移った体温ではなく……



抱く腕も、胸も、肩も


触れる場所……コイツが、俺に触れる場所全てが



そこから熔けちまうんじゃ、と思う程の





熔けて、くっついて……あぁ、いっそそれもイイかも。
なんて。


……そんな感覚。

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あきゅろす。
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