極楽蝶華
供給式水分補給
寝室に入り、奥の壁際に据え付けられているキングサイズのベッドに細い体躯を横たわらせた。
毛布と羽毛布団を肩まで掛けてやり、横に腰掛けて頭を撫でる。
ふと、肌から汗が退いている事に気付いた。
思うことがあり、顔を唇が触れるほどに近づける。
……喉から笛のような音が鳴っている。
呼吸も……浅く、速くなって……
……脱水症状を起こしかけている、な。
今熱を出しているのも恐らく昨日ずぶ濡れになったからだろう。
罪悪感が胸をつついた。
ダイニングに足を運び、キッチン横の冷蔵庫の中からスポーツ飲料を手に取って寝室に戻った。
身体の下に腕を差し入れ、上半身を持ち上げてやり、歯でキャップを開けてそのまま中身を口に含んで
目の前で薄く開いている唇に口付けた。
「……ん……」
流れ込む冷たさに反応して声が漏れる。
が、渇いていた身体が反応して、与えられた水分を飢えるように貪った。
一旦離れてまた一口含み、再度口付ける。
中身が半分ほど無くなった辺りで飲み切れなかった透明な液体が口の端から零れ落ちた。
半開きの口の端から、透明な筋が一本走る。
抱き上げていた身体をベッドに戻して、顎まで流れた筋を舐め取ってやった。
自身もベッドに上がり、横から抱き抱える恰好で傍らに寝転がる。
額に手を充てる。……まだ熱は下がっていないようだ。
呼吸は幾らか楽そうになったので少し安心して。
そのまましばらく銀糸を指で弄び、頭を撫でながら寝顔を眺めていた。
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