短編
私の彼は××コン
私の彼氏は優しくて、顔も悪くなくて、たくましくて、客観的に見てイイ男。
そんな彼にも一つだけ欠点がある。
人間一つくらい欠点が有った方が良いと言うけれど、どうしても嫌なので、なんとか治して欲しい。
彼は、とある、病気だ。
深刻なものじゃなくて、『ビョーキ(笑)』と言われる類の。
例えば今、デート中。彼は家族連れを目で追っている。
私だけ見て、なんて言うつもりは無いけれど、視線の先を確認してしまえば言わずにはいられない。
「…ショタコン」
ボソッと耳元に落とし込んだ一言に、彼の肩がびくっと揺れた。
――私の彼氏は、小さい男の子が大好きなのである。
***
そもそもが、出会いからしてその兆候は有った。
私と彼を引き合わせたのは、私の弟なのだ。
『牛乳ないの。お願い☆』
と。その日、私は母からのメールを見て、いつもとは違う道を通って帰宅する最中だった。
スーパーに寄った帰り、公園の前を通りかかった。そこはいつも弟が友達と遊んでいるらしい場所で、まさに弟の声がしたのだ。
そろそろ弟の門限だと思い至り、私はついでに弟に声を掛けようと公園に入った。
「あ、お姉」
私に気付いて駆け寄ってきた弟を抱き止めて(姉弟仲は良好なのだ。)、弟の後ろで仁王立ちしている男を見た。
多分、私と同年代。
どう間違っても弟と同年代には見えない。
「暇そうだから遊んでもらった!」
イイ笑顔だった。
明らかに自分より体格の良い男(マッチョ)に対してこの発言。
弟の将来にそこはかとなく不安を抱きながら、その人に頭を下げる。
「弟がご迷惑をお掛けしました」
「ああ、…俺も楽しかったから、別に…」
ふいっと顔を背ける動作が好みだった。恐らくはギャップ萌えというやつだ。
きゅっと私の手を握った弟が、彼を見上げて言い放つ。
「兄ちゃん、また遊べよ!」
命 令 文 !
流石にぎょっとして謝罪をしようとすれば、彼の顔が綻んだ。
ふわっととろっと、こっちが赤面するくらいに甘く。
その笑顔に落ちたんだから、本当は彼がショタコンであることに文句なんて言えないのだけれど。
***
「ねぇ、」
と、彼のシャツの袖を握りしめる。
「こっち見てよ、ばか」
一緒にいるときくらいは私を見て欲しいって、そんなに我が儘なこと?
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