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短編
不愉快な告白(※一部GL)

 ああもう、本当に、この野郎。

 ――どうしてくれようか。




不 愉 快 な 告 白




 嫌いな言葉。
 「だって」「でも」「もしも」「大事なのは過程だ!」
 つまり、無駄。大事なのは過程って何なのさ。その一言が既に過程をないがしろにしている。結果を手に入れる為の努力なんだから、努力すればそれで良いって言葉は、実際に努力した奴を馬鹿にしているだけだ。少なくとも、あたしはどうしても結果が欲しかった。あの子が欲しかった。手が届かなかったのは努力が足りなかったからだっていうなら、まだマシだった。
 それと、心のこもっていない「ごめんなさい」。
 いやいや、心のこもっていない言葉は「ごめんなさい」じゃなくてもノーセンキューなわけですが。
 そうだな、例えば。

「好きだ」

 これだ。
 あたしの機嫌は悪くなる。当然だ。罰ゲームで告白されて喜ぶ女がいるもんか。いたとしても、それはあたしじゃない。

「…罰ゲーム、お疲れさん」

 へっと鼻で笑って教室の後ろのドアに音も無く近付き、ガラッと勢いよく開けると、男子が二人、廊下にへたり込んでいた。

「悪趣味なことするもんだねぇ」

 片眉を吊り上げておどけた表情を浮かべてみれば、引き攣った表情で立ち上がって逃げていく。
 ――さぁて、と。

「お友達は逃げたようだけど?」

 教室を振り向いて、あの不愉快な台詞を吐いた奴に向けて首を傾げる。クラスメイトの時田くんは楽しげに笑って言った。

「あんた、意外と性格悪いなぁ?」

 じゃかぁしいわ。
 良い笑顔でなんつー台詞を吐くんだこいつは。

「あんたに言われたか無いね」
「えー?俺性格良いだろ」
「性格良い男子は冗談でもクラスの地味系女子に罰ゲームで告白なんてしないわ」

 けっと吐き捨てると奴は実に嬉しそうに笑う。駄目だ理解できない。何故こんなにはっきりしたあてこすりに笑っていられる。むっとしないのか。

「実際、地味じゃないんだな、性格」
「まぁね」
「隠さないの」
「何のために隠すんだよ」
「それもそうだ。――で?告白の返事は?」

 と、時田くんは首を傾げる。

「時田くんとは付き合いたくありません。ゴメンナサイ」
「悪いなんて思って無い癖に」
「思ってるよ」

 あたしは笑う。

「時田くんにじゃないけど」
「は?」
「憧れの時田くんに告白なんかされちゃって、隣のクラスの住吉さんには申し訳ないなぁ」

 時田くんが、「うわぁ」と引いた表情をする。

「それを俺に言っちゃうの。辻堂、マジ最悪だな」
「何さ、時田くんなんて。住吉さんの気持ち知ってて知らないふりしてるくせに」
「あー。…よく見てんなぁ辻堂。もしかして俺のこと好き?」
「大っ嫌いに決まってんだろうが」

 あたしの即答に時田くんは目を見開く。
 にっこり笑って鞄を持った。

「日が暮れたから、あたしはもう家に帰る」



 さてさて、時田くんはいつ知るだろう。
 あたしと住吉さんも、幼馴染だってことを。

 嫌味の数々は、あたしが大好きなあの子の為に?
 いえいえ、単に腹が立ったのさ。あたしのあの最愛に愛されている馬鹿野郎に。
 つまりは、只の嫉妬。

 ぎりぎりと鞄の取っ手を握りしめる。
 嫌いな言葉に追加しよう。

「ずっと友達でいてね!」

 もしもの話は嫌いだけれど。
 ――ああ、あたしが男だったなら!





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