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ハロウィン (クロ月)





今日はハロウィンである。
ハロウィンである。
なので、

ツッキーに電話をかけることにした。

『・・・なにが「なので」ですか・・・全然説明になってませんよ!』
ツッキーの声は、少し呆れ気味だった。
「だってさあぁ・・・」

「それでですね、今日って、ハロウィンな訳ですよ。」
『いや、さっきもソレ言ってましたよね、あなた。』
「今日ハロウィンなんだよぉぉぉ!!」
『なぜそこまでハロウィンに食いつくんですか・・・、というか電話口で叫ばないでください、とてもうるさいです。』
「うぅ・・・ひ、ひどいぞツッキー・・・」
『あー、はいはい。』
「た、対応が雑に・・・!」

まったく、とツッキーはため息でもつきたげに言った。
『うっとーしぃですー。で、用件は何ですか?』
「お、お前、仮にも付き合ってる相手に対して・・・」
冷たいじゃねえかツッキー!!

『何ですか?まさか今日がハロウィンだっていうことだけを伝えたかっただけっていうことじゃないでしょうね?』
「用件がなきゃ電話もかけちゃいけねぇのっ!?」
『用件が無いんでしたら切りますが?』
「ちょっ、ま、待ってツッキー!!」
『ああん?』
「なんかキャラ違う!?」
こ、これが鉄壁のツン・・・
今更だけどやっぱつよいな・・・

・・・ま、ツンツンしてるところもかわいいんだけどさあ。
典型的なツンデレ・・・あ、でもツッキーの場合、ツン9割、デレ1割ぐらいだけど。

まあ、ツッキー万歳ということで。

って、いやいや、ツッキーとの会話に集中せねば。
うかうかしてるとホントに電話切られる。
「いや、よ、用件ある、あります!」
『へえー・・・何ですか?』
「へえーって!へえーって!」
『うるさいです。さっさと言え。』
「・・・・・・はい」



「いや、あのさ。俺達って、いわゆる遠距離恋愛じゃん?」
『・・・はあ』
「でさ、他のカップルとかはさ、どうせさ、

『トリックオア・トリート〜!!』
『あ、ごっめ〜ん、私、今お菓子持ってないの〜』
『じゃあイタズラしちゃうぞ〜っ』

とか、そんな風にいちゃいちゃしてるんだぜ!?」
『さすがにバカップルもそんな風にはいちゃいちゃしてないと思いますけども。というか黒尾さんがそんな妄想をしていたということにドン引きです。』

「あー、俺もツッキーといちゃいちゃしたい!!バカップルみたいに!!バカップルみたいに!!」
『なんで2回言ったんですか。』
「あー、ツッキーにあいたいー!!」



そう言ってから、はあ、とため息が出た。
「ツッキー・・・」
『・・・・・・』
呼び掛けると、ちょっと俺の声色がかわったことがわかったのか、ツッキーは何も言わなかった。



ああ、


(会いたいなあ、ツッキー。)


会いたい。
ツッキーに会って、生で会話をして、触れて、そして抱きしめたい。

電話をすることでここしばらく紛れさせていた気持ちが、唐突に溢れ出した。

「ツッキー。お前に、会いたい。」

何でこんなにも、俺とツッキーは離れているのだろうか。
何で。


自分の涙腺が少し緩み始めたことを感じて、慌てて頭を振る。
・・・まったく、俺は乙女かっつーの。


『・・・黒尾さん、僕、』
「・・・?」
『・・・、・・・やっぱり、なんでもないです。』
「おう、そっか。」
『・・・・・・あの、気が向いたらまた今度、言います。』
「うん、わかった。それじゃあ、またな。」
『はい。』

その声を合図に、俺は電話を切った。
静かな部屋に残ったのは、どうしようもない空しさだった。




そして、その次の日のこと。
ツッキーからめずらしく、着信があった。

『・・・もしもし。』
「お、もしもし、ツッキー?どした?」

『黒尾さん、東京の天気って、今どうですか?』
「・・・?何で?曇ってるけど。」
窓の外を見ると、暗い灰色の雲が立ち込めていた。

『いえ、なんとなくです。あ、雨とか降ってるんですかね。』
「うーん、よくわからん。」
たしかに雨も降っていてもこの雲の様子なら不思議はない。

『ちょっと確かめてみてくださいよ。』
「いいけど、東京の天気なんか知ってどうするんだ?」
『いえ、だから、単なる興味です。』
なんだか少し変だな、と思いつつも窓を開けて手を外に出してみる。

「特に雨は降って無いな・・・」
そう言って首をかしげ、窓を閉めようとした、その時。


『「く、黒尾さんっ!!」』
あれ?なんだか、2方向から声が・・・??
どういうことだ、と脳が処理する前に、ツッキーは言った。



『下、見てください』

幻覚かと最初は思った。
だってそれは、ここにいるはずがない人物だったから。

黄色系の髪に、黒の眼鏡、細い手足。
ああ、これは夢なんだろうか。
いや、最早夢でも何でもいい。



そこにいたのは――








「来ちゃいました、黒尾さん。」







あなたに会いたかったです、


月島蛍はそう言って、笑った。














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あきゅろす。
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