Main みかん風呂 (及岩) (社会人・同棲) 「岩ちゃーん、母ちゃんから宅配便なんだけど−、」 「ん?どうかしたか?」 及川のお母さん? 及川のお母さんは、自立してルームシェアをしている俺達に、 たまにおいしいものとか便利なものを送ってきてくれる。 自立しているとはいえ、まだまだ半人前の俺達にとっては、とてもありがたい。 「それがさ、中身、みかんの皮だったー。」 「皮?」 「うん。皮。」 「みかんの皮なんて、何に使うんだ?」 そう聞くと、及川は不思議そうな顔をして俺を見た。 「あれ?岩ちゃん覚えてない?」 「何を?」 「いや、ちっちゃーい頃にさ、みかん風呂やったことあったじゃん」 「みかん風呂……、覚えてないな…」 「えーっ、」 と及川は不満そうに頬を膨らませた。 「俺は覚えてるのにーっ、岩ちゃんのはくじょうものー」 「んな小さい頃のこと覚えてるわけねえだろが。あとその言い方ヤメロ」 「なつかしーなー、あの頃は岩ちゃんも純粋で素直でさー、『とおる、いっしょにフロはいろうぜ!』なんていってて、超かわいかったのにー。あとさ、岩ちゃんが石鹸で滑って頭ぶつけたりー」 「俺はお前がそんなことまで覚えてるのが不思議でしょうがねーよ。」 とりあえずむかついたので一発入れる。 いたいよ岩ちゃん!俺なんかした!? などと及川は喚いているが自業自得だとは思わないのだろうか。 「まあ、お前も昔はこんなに及川じゃなかったけどな。」 「え?どゆこと!?なにその及川っていうの!使い方ヘンじゃない!?」 「いや、形容詞。」 「つ、つまり」 「及川は今日も及川ってんなあ・・・しょうがないやつだ」 「ひどいよ岩ちゃん!そして意味がわからない!!及川さんこんなにかわいいじゃんか!!」 「むかつく。」 「なんでーっ!」 「むかつく。」 「ひどいやひどいや!岩ちゃんのばかー!」 「うるせえ。」 2発目だ。 「…で、みかん風呂って、なんだ?」 「いや、簡単簡単。みかんの皮をお風呂の中に入れるだけだよー。」 ??と首をかしげる俺に、何故だかみかん風呂の良さを力説する及川。 「これ、お風呂の中に入れると、お肌ツルツルになるんだよ!!体も温まるし!!オススメ!!」 「…お前はどっかのセールスマンか」 「…まあ、でもいいんじゃないか?たまにはそういうのでも」 「おお!岩ちゃん乗り気だね!じゃあ今日のおフロはみかん風呂〜!久々に岩ちゃんとおフロだね〜」 …は??…今、踏むべきステップを色々と飛ばした気がするのだが。 「っおい、ちょっと待て及川、」 「ふふふー、待ーたなーいよー」 「なんで俺も一緒に!?俺は一緒に入らねえぞ!!というか、入る訳ないだろ!!スペースも狭いし!!」 語尾に音符がついていそうな口調の及川に、俺は必死に反論しようとする。 だが、こういう時の及川に俺が勝てる訳がなく、遂に及川と十何年ぶりに一緒に風呂に入ることになってしまった。 「いいか!?絶対!変なこと、すんなよ!?……なんかやったらただじゃ済まさねえからな?」 「えええーっなんでよーっ」 「何でも何もあるかクソ川!!」 服を脱ぐ行程がなんとなく恥ずかしく、…その照れ隠しもあって、及川を風呂場に叩き込んだ。 「岩ちゃーん、しゃんぷーとってー」 「…ほい。」 面倒だったのでシャンプーボトルをそのまま床に及川の手元まで滑らせる。 「うわー、岩ちゃんったら渡し方雑ー」 「うっせえ」 現状、俺と及川は背中合わせ。 狭い風呂部屋に半ば無理矢理押し込んだ感じになっている。 俺がシャワーを使っているから、及川は柄杓を使っているが、 「及川、俺はもう頭洗い終わったからシャワー使えよ。」 そう言ってシャワーヘッドを及川の方に出すと、 「あ、いいよいいよ。俺、シャワーって苦手。」 シャワーが苦手? そんなのは初めて聞くが… 何故かと問うと、 「いや、あのね、シャワーのね、最初につめたいの出てくるでしょ?」 「うん、まあそりゃそうだ。」 「あれがやなの。小っちゃい頃そうと知らなくって、そのまんま浴びちゃって、それ以来ダメ」 「はー…トラウマ的な?」 「んー、そんなとこまでいかないけどねー」 そう言って、ちまちまと及川は柄杓で体を洗った。 「__さてと。」 カン、と及川が柄杓を置く。 「つーかコレ、そもそも二人も入んのか?」 「大丈夫!そこは岩ちゃんと俺の愛の力で!!というわけで、俺と岩ちゃんが向き合って、」 「却下する」 「何で!?」 「二人共体育座りで背中合わせとか」 「それ他人行儀すぎない!?」 折衷案として、体育座りで及川が壁の方を向き、俺は及川の方を向くことになった。 「コレ俺の意見が全然折衷してない気がするんですケド!?」 「これ以上何か騒ぐんだったら、3発目だけど、いいか?」 「わかりましたそうさせていただきます」 そんなこんながあって、俺達はやっとのことで湯船に浸かることができた。 ピチャン、と天井に溜まった水滴が落ちてくる。 「ふうー…」 「うわ、岩ちゃんオジサンみたい」 「あん?」 「なんでもなーいよー」 周りにはみかんの皮が浮かんでいて、そのオレンジ色がなんだか綺麗だった。 (…それにしても) 風呂の中の配置により、俺は必然的に及川の背中を見ることになる。 (そういえば、こう落ち着いて及川を見ているのって、あんまりなかったかもな…) …まあ、それは及川が普段落ち着きが無いからだろうが。 (…あとは、まあ、……えろいことしてるときぐらい) と、そこに思考が行ってしまい、色々思い出して顔が熱くなる。 (くそ、及川のくせに!!) 「…ごふっ!?」 殴られて、突然のことに及川はバッと振り向いた。 「あ、悪い、つい。」 「ついって何!?」 「うへぺろ」 「人のお株奪わないで!しかも棒読みっ!」 「あー、悪かった悪かった。」 というか、当てる気は無かった。 「その前に理由!説明!プリーズ!」 「いや……八つ当たり」 「?、今日なんかやなことあったの思い出したとか?」 「そうじゃなくて、及川が…」 「え」 「…あ」 ここで赤面してしまわなければよかった。 「岩ちゃん」 「…んだよ」 「もしかして、及川サンがイケメン過ぎたのかなー??」 「んなわけ、」 「ちょ、及川、待て…」 まずい。 これはまずい。 いつの間にか、体勢が、及川が俺に覆い被さる感じになっている。 「おい、なんもすんなって言っただろ…!」 及川が次第に身体を前のめりにさせていく。 「かわいいなあ、岩ちゃんは」 及川の吐息が、 「岩ちゃん」 熱くて、 「ねえ、岩ちゃん」 とろけそうで___ 「___っ、だ、やるんなら風呂上がってからだ!!!」 寸手のところで踏み留まった俺は、両手で及川を押し留めた。 「……もー、寸止めはキツいよー岩ちゃーん」 パシャリ、と音がして、及川が身体を上げる。 「…いいからさっさと風呂上がるぞ」 「岩ちゃん、このあと、逃げないでよー」 そう言って及川はにやりと笑った。 「…わぁーってるよ」 「……お前の好きにしろ」 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ ええ、はい、何が書きたかったんでしょう←← 多分岩ちゃんのデレをやりたかったのではと思いますが……あれー… [*前へ] |