僕だけな筈はない


 そう、わかっていた。ずっとずっと彼女に近づこうとしていた僕でなくても、少し考えればわかる事。

「棚牡丹香奈恵さん。ずっと、ずっと前から好きでした。つ、付き合ってくださいっ!」
「今日は油絵みたいな雲が広がってるね」

 えええっ? かなちゃん? まさかの現実逃避!? このタイミングでそれは、えええええ……。

「あ、あの……?」
「え? あ、ごめん。ほら、あっちだよ。額縁があったらはめ込みたいぐらい綺麗だね」
「ほんとだ……って違くて、好きなんです。毎日俺の味噌汁……は嫌いだからコーンスープか野菜ジュース作ってください」
「え? あー、ごめんね? 私、料理はちょっと……。あっ! リカちゃんが凄く料理の事詳しいみたいだから、言っといてあげるね!」

 ちょっとちょっとぉおおっ! コーンスープとか野菜ジュースの前に随分ベタで分かり難い告白(てか最早プロポーズじゃん)したD組の鎌田君も悪いけどさ、かなちゃん告白ほぼ総無視だよね!? しかも違う女の子紹介しちゃってるし……。

「あ、いや、言えてスッキリしました。リカちゃん? の紹介はいいです。アイツと幸せになって下さい。では」
「ん? あ、ばいばーい」

 えぇっ!? 鎌田君それでいいの!? てかアイツって誰!? あ、気づいた。僕、かなちゃんに告白現場覗くのよくないとか言いながら偶々裏庭に来たら二人が居たからって、めっちゃ覗いてるじゃん。うわわっ、どうしよう。かなちゃんに気づかれたら嫌われちゃうかも。その前にアイツって誰。鎌田君のばかー!

彼女は、密かにモテるのです。

(ヤバい、うかうかしてらんない)
09.08.10


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あきゅろす。
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