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非日常的な日常
1



(初めてこの世界で山本君を見かけた時から……)



(傷つけたくないし傷つきたくないから嘘をつく、間違ってないよね?)



(ラル!?バジル!?どうしてこんな所にいるんですか!?)





Action.11〜好きです。〜





「っそだろ!?」

「山本……?」

僕は空音がとある騒動に巻き込まれてると言う事だけを山本に耳打ちした。

ツナと獄寺が首を傾げてるけど、無駄に広めて心配かけてもしょうがないので僕は教えずに山本に体育館裏に行くように告げた。

山本君は僕の話を驚きの声をあげてからは黙って聞いてくれる。

「理沙……、空音の事教えてくれてサンキューな」

そう言う山本の顔は恐ろしいほど真剣でかっこよかった。

……オイオイうっかり惚れかねないぞ!

「いいから早く行ってきな!」

「ああ!ツナ、獄寺、俺急用ができちまったから行くぜ!」

「う、うん……」

「勝手にしろ」

山本はツナ達に断りを入れるなり持ち前のダッシュ力で屋上のドアの奥へと消えていった。

「足はえー……」

僕があまりのスピードに感心してたが、獄寺の一言で一気に現実に引き戻されることになった。

「よくもまぁ、空音なんかにあそこまで惚れ込んだなぁ……」

惚れ込んだねぇ……。

…………ん?惚れ込んだ!?

「え!?ちょ、獄寺今何て言った!?空耳だったら恥ずかしいんだけど今どーしても聞き逃せない単語が耳に入ったんだけど!?」

僕は山本が今さっきまで座ってた場所に座っていたけど、思わず獄寺に両手を前について接近して訊いてしまった。

「なっ!?ちっ、近けえよ……っ!///」

もともと顔の作りがきれいな理沙に、もうちょっとで鼻がくっ付くほどに接近されて思わず赤面してビビる獄寺。

あまりの勢いに背中が反って、獄寺の体重の重心が後ろに移動する。

「理沙ちゃん落ち着いて!」

そこで鶴の一声ならぬツナの一声でハッと理沙が我に返った。

「あ、ごめんよ獄寺……」

「び、ビビらせんなよ……///」

後頭部を掻いてる獄寺ではなく理沙はツナに先ほどの疑問を訊いてみた。

「あのー、さっき獄寺は惚れ込んでるとか言いましたか?」

「あれ?もしかして理沙ちゃん山本から聞いてなかったの!?」

いかにも初めて知りましたってリアクションのツナ。

…………………。

「そのー……つまり、山本は空音が好きってこと?」

「(言っちゃっていいのかなぁ……?でも獄寺君がバラしちゃったようなもんだしなぁ……)」

ツナは少し戸惑ったそぶりを見せてから。

「うん、そういうこと……」

と頷いて見せた。

山本と空音は両思いでした。


「うっそ……!マジかよ……!?両思い……かよ……」

僕の台詞に今度はツナ達が驚く番。

「ええええええええええええ!!!???」「マジかよ!?」

……気づいてなかったのか。

確かに直接は言ってなかったけど、空音の行動は結構分かりやすいと思ったんだけどなぁ。

「あいつら両思いだったのかよ……」

「山本、一昨日辺りから結構告白するとか迷ってたんだよ……」

「へぇー。恋は盲目ってやつなのかね?両思いかぁ……いいn」

と、僕は途中まで言いかけて言葉を止めた。

違う違う!!!ダメダメダメだって!!!!羨ましくなんてねぇよ!!!!

……ツナと結ばれようなんて思っちゃダメ。ツナは京子ちゃんが好きなんだから。

胸がズキリと痛んだ。

「なんか言ったか?」

「えー?何も言ってないけど?」

獄寺が言いかけたのを気にかけて僕は笑顔で誤魔化す。

「そんなんだったら告白させちゃえばよかったね」なんて笑いながら言うツナの顔を見る。

こんな気持ち、早く捨てなきゃ。



* * *



空音が危ない。その一心で走った俺。早く行かなきゃいけない気がした。

俺が体育館裏にいくといつもおなじみの声が聞こえた。

「群れてごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

「空音っ!!!!!!!」

悲鳴に急かされて俺はとうとう体育館の裏にたどり着いた。

そこにいたのは、俺を見て唖然と立ってる上原と、無表情で空音に土下座されてる雲雀と、土下座の体制のまま首だけ俺を見て目を丸くしてる空音だった。

「…………上原、雲雀、これはどういう事だよ」

雲雀が空音に土下座されてる。これは案外よくあることだった。でもいつも空音が不憫であんまり好きじゃねぇ。

……でも何で上原だ?何で上原がいんだよ?なんで……

「何で上原がナイフ持ってんだよ?」

腹の底から怒りが込み上げてきた。

俺は空音に近づいて未だに固まってる空音の肩を抱えて立たせた。

「や、山本君っ!な、何で……」

ナイフ片手の上原が震える声を出す。

「雲雀、これはどういう事だよ。テメェ空音に何したんだよ、返事によっちゃぁお前を許さねぇぞ」

雲雀は何でもない顔をして言った。

「僕は何もしてないよ?空音に触ってもないし空音には一言しか話しかけてない」

「山本君、その……」

空音が何か言おうとしたけど、その前に上原のうめき声が耳に入った。

「う…あ…あぁ……っ!」

「……上原、お前……、またやったのか?

本当はこんな事言いたくないんだけどな。

隣にいる空音が怪訝な顔をして俺を見た。

「だってぇ……、コイツ、獄寺君と山本君と……二股してんだもん……。そ、そんなの何も知らない……山本君の為に……」

「はあ?」

上原は何言ってんだ?

二股?空音は獄寺と付き合ってんのか?空音は……俺と付き合ってなんかいねぇぞ?

意味が分かんねぇ……。

空音は口をパクパク金魚のごとく動かしながら、俺と上原を交互に見る。

「……空音、悪いんだけどどういう事なんだ?」

「だから……、二股なんてしてない……その……誤解なんだって」

空音が恐る恐るそう言うと、

嘘つくなああああああああああああああああ!!!!!

激昂した上原が手に持ったナイフを空音に投げてきた。

ナイフは真っ直ぐ空音に向かって飛んでくる。

「空音!!!!!」

≪キンッ!≫

俺が飛び出すのと空音がポケットに手を入れるのと金属が同時にぶつかる音がしたのは同時だった。

飛び出した勢いのまま空音を胸に抱えた俺は勢いを殺し切れずに地面に倒れた。

「うぎゃっ」

……空音が下敷きになっちまった。

横から抱えられたおかげで肩から地面にぶつかった空音が痛そうな声をあげてた。

「…………ねぇ、そこの二人は何やってんのさ?」

「「!!/////」」

雲雀が呆れて、その言葉に抱き合う形になってたおれ達は慌てて離れて立ちあがる。

トンファーでナイフを弾いてくれたのは雲雀だった。

「なんでなの!?なんでその子なの!?山本君は騙されてるんだよ!!!!????その子はウソついてるのに何で信じてくれないの!?」

上原はと言うと、涙を流しながら叫んでいた。

「山本君は二股かけられてるんだよ!?」

そう言う上原に空音はなにも言わずに俯いてしまった。

……俺は空音が嘘つくとは思えねぇんだ。

と、不意に雲雀のケータイがその場に鳴り響いた。

確かにあたしは山本君の事が好きですっ!//////

「あ゛あ゛あ゛あああああああああああああ!!!!///////////」

蘇る恥ずかしい記憶。

空音の悲鳴。心の底から、腹の底からの悲鳴。悲しく鳴くと書いて悲鳴。ムンクの叫びのような顔をして叫んだ。

それに反してクールな雲雀。

状況が整理できてない上原とオレ。

「そこの理解できてない二人の為にもう一度流すかい?」

「雲雀さんのバカああああああああああああああ!!!!!!!!!//////」

雲雀の学ランを掴んで揺さぶる空音。

って言うか何で学ラン外れないんだよ

「ちょ、触らないでよ。離さないと僕帰れない。別に咬み殺してほしいなら大歓迎だけど」

「あうあ゛〜〜〜〜〜!!!!」

あんまり可愛くない声を出して、学ランから手を離す空音。

雲雀は堂々と退場していった。

最後体育館の影に消える間際に、ニヤリと笑って

確かにあたしは山本君の事が好きですっ!//////

と、置き土産のように再生して。

「……や、MA、モと、君……」

雲雀が去り、チンプンかんな発音で俺の名を呼びながら、ロボットのごとく首だけ俺の方を向いた空音は顔が青ざめていた。

……えーっと……。

さっきまで停止いていた思考を空音の言葉で再開させる。

ゴチャゴチャの頭の中から見つけた答えを小さく声に出してみた。

「……空音は、俺の事が、好き……?」

口からこぼれた言葉は、少しずつ現実味を帯びてきて、頭の中のゴチャゴチャが少しずつ整理されていく。

そう、雲雀はどうしてかなんて知らねぇけど、空音の声を録音してたんだ。

で、録音された声は間違いなく空音のものだった。

「なぁ、空音は俺が好きなのか?」

2回目は空音に対しての質問に変って、空音は一気に顔を赤く染めて頷いた。

その瞬間、俺の胸に喜びの波が一気に込み上げて、その衝動のまま小さな空音の体を抱きしめた。

順番が逆になっちまったが、返事をしようと口を開く。

キンチョーして心臓がうるさいぐらいドキドキした。

「お、俺も空音が……s「山本君のバカーーーーーー!!!!!!」」

横やりを遠慮なく入れたのは存在を忘れられていた上原だった。

「何!?山本君はあたしよりその子の方が好きなの!?ありえない!最悪!!!信じらんない!!バカバカボケおたんこなす!!!!」

……完璧に雰囲気がぶち壊れちまった。

お陰で急に気恥しくなって、空音を抱きしめる腕を離しちまった。

「なぁ上原」

「何!?野球バカ!!!」

俺は上原に話しかけながら歩み寄ったけど、完璧に拗ねてる。

「……悪いんだけど俺、空音の事好きなんだ」

「バカバカバカ……あたしの方が幼馴染で付き合いが長いのに……」

「ごめんな……」

頭を撫でてやると視線を逸らしてた上原が俺を見上げて、脇を指さす。

「あの子が嫌になったら“ここ”いつでもあいてるから」

オー○リーの春日かよ。




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