非日常的な日常
1
上原さん!?ちょ、何するの!?
空音!?あんたまた何も言わずにどこにいったし!?
ギャァァアァァア!!やめてください!!勘弁してください!!
Action.10〜異世界少女と学校のエース〜
「う゛おぉい!!!行くぞぉ!!!」
「うあぁぁ!!!」
《ドガァァァァン!!!!!!》
どうも!
ただいまスクアーロのお陰で逃げ惑っている優菜ですっ!
現在、さっきまであたしがいた位置のすぐ後ろにある壁は、スクアーロの剣から飛び出した火薬によってえぐられてます。
「優菜!何があっても敵に背を向けんなっつってんだろぉ!」
「すすすみませぇん!」
殺されかけたのに涙目になりながら、スクアーロに頭を下げる状況に追いやられた理由の前に、時間軸を3日前に戻しますね!
―――三日前、あたしは変な神様にトリップさせられ、ヴァリアー邸のメイドに任命され、スクアーロさんに嫌われたと思い込みながらシャワーを浴び、そしてルッスーリアが持ってたらしいメイド服を着て、更衣室から出たとき。
更衣室から出るドアの向こうにスクアーロがとっっても機嫌が悪そうに待ち構えてました。
うん、ホッペにさっきまでなかったアザができてた。
そんなスクアーロがいて、驚いたあたしは勿論スルーなんて出来なくて、だからってどうしたらいいかわかんなくて、結局その場で静止してしまった。
スクアーロはあたしの姿を確認して迷って3秒後、
「……さっきは悪かったなぁ」
唐突に謝られた!
「え、いや、その……!アルマジロごとき気にしないで下さい!」
……また何言ってるの自分!?
「ブッ!」
スクアーロに仏頂面のまま噴かれたァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァ!!!!!!
彼はだんだん少しずつ表情を綻ばせて、最後にはなぜか獰猛な獲物を狩る鮫のような顔をして言った。
「あぁ……なるほどなぁ……、ベルがアルマジロって名前にしたがるわけだ……、くくっ……雑魚だけど笑いは取れそうだな……」
……この人は(っていうかルッスーリアを除くヴァリアーの人)普通に優しく笑うことは出来ないんですかね?
笑い顔でさえ怖いんですけど!?
「ってテメェ怯えてんじゃねぇぞぉ」
心を見透かしたみたいな事を言われて、思わず姿勢を正す。
「あ゛ー、ボスからの伝言だ。テメェにはメイドをやると同時にこれからリング奪取、及びボスをボンゴレ10代目に就任させるための戦いのために、戦闘訓練を俺がつけることになった」
彼の言葉を理解するのに思ったより時間はかからなかった。
「え?つまり……あたしも戦うって事……ですか?」
それと……ヴァリアー編の前……?
「いいや、お前はあくまで実戦部隊じゃねぇ……だが!!!」
「這這狽ミぃぃ……っ!」
いきなり語尾を大声で強調して、剣をあたしの喉元に突きつけられた。
一気に体がすくんで息さえも苦しくなる。
さすが暗殺者って言うだけあって迫力が半端ない。
「テメェは仮にもヴァリアー所属だ。いつ戦火の中に放り込まれるかわかんねぇ。その時には自分の身は自分で守れって事だ」
「…………」
そう言って剣を下したが、あたしはいまだに心臓がバクバクで口をきく事ができずに、更衣室の扉に背中を張り付けていた。
「……テメェの場合まずは度胸をつけるとするか……。お前の持ち物、絶対無くすんじゃねぇぞぉ、肌身離さず持ち歩けぇ」
言いたい事を言ってクルッと踵を返したと思ったら唖然としてるうちに視界から消えてしまった。
「……ってここどこ!?あたしはこれからどこに行けばいいんですか!?」
なんて独り言が虚しく消えて行って、結局20分後にベルがやって来るまでじっとしていた―――
≪ドガァン!!!≫
「うあああ!!!!!!」
「まだまだ行くぜぇ!!」
≪ドガァアアァン!!!≫
そんな経緯があって今修行しています。
「ス、スクアーロ…、ぎ、ギブアップ……!もう、走れない……です」
息絶え絶えのあたしを見て、いったん手を止めてつかつかこっちにやってきました。
「……まぁ、背を向けなくなっただけ及第点とするかぁ……、お前こっちの世界に来る時に貰ったのを出してみろぉ」
「……これですか?」
あたしの手にひらになってたのはピンクの小さなウサギのストラップ。
それを見てスクアーロが頷いた。
「あぁ゛。今からマーモンとそれの使い方を習得するのが次のお前の課題だぁ」
「つ、使い方!?」
* * *
「山本君!早くしないと遅刻する!今日は雲雀恭弥様が待ち伏せてるから急がないとやばいって!」
「わり、つい自主練に夢中になっちまってなー!」
見かけは小学生、頭脳は腐女子な本来高校生のあたしは、登校中公園でビュンビュンボールを投げている山本君に出会った。
「今日も早く家出たから部活かと思ったー」
「だってもうすぐ秋の大会だからな!部活が休みでも練習は欠かせねぇよ!」
「(うあああ!!爽やかスマイルーーーー!!!!///)が、頑張ってね!」
「あぁ、サンキューな!」
ボールを鞄に入れた彼に応援の声をかけるとまたまた素晴らしい破壊力のスマイルと、ガッツポーズを見せてくれる。
あぁ!朝から幸せすぎる!
「それじゃ、学校いくか!」
* * *
「桃原空音、山本武、遅刻だよ(ニヤァリ)」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!!!」
「悪かった!だから今回は見逃してくれな!」
校門で超絶凶悪顔の雲雀恭弥様様につま先でも舐める勢いでひれ伏すあたしと、あたしの後ろで土下座まではしないもののペコペコ謝る山本君。
「本当申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「さぁて、今日は放送委員会の所に行ってアレを全校中に発表しようかな」
もうね、本当は凄い綺麗な笑みなんだよ!凶悪さを除けば!!!!
ケータイ片手に凄く楽しそうにあたしを見降ろしてるんだよ!!!!!!
「お願いです!!!それだけ堪忍して下さい!!!!!!!」
「じゃあ今この場で流すくらいでいいや」
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
もちろんアレって言うのは先日盗聴(?)された告白ボイス。
ええ!ちょうどあたしの後ろにいる山本君の事だよ!?
「靴でもなんでも舐めますからそれだけは勘弁してぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「……それ、僕の靴が汚れるだけだから」
非常にげんなりされた所でちょうどチャイムがキーンコーンカーンコーンとSHRの終わりを告げる鳴り響いた。
「あ!授業が始まっちまうから俺達もう行くな!」
山本君はそう言って跪いてるあたしの手を引っ張って駆けだした。
雲雀さんとすれ違う瞬間、頭に強烈な衝撃が走ったけど山本君がずっと手を引っ張っててくれたおかげで何とか通過。(間違いなく雲雀様のトンファーがクリティカルヒットした!)
なにはともあれ、山本君GJ!
「おでこ大丈夫か?」
「うん、よくある事だし!」
「マジかよ!?」
教室に辿り付くと妙に教室が騒がしかった。
女の子がやたらピリピリしてるのは気のせい……?
「おはよー!ツナ!」
そんな事は全くお構いなしにツナに挨拶する山本。
「おはよ山本と空音ちゃん!」
「二人ともはよー」
ツナと空音は向かい合って獄寺君に教えてもらいながら宿題をやっていた。
「あれ?理沙が珍しく宿題やってない!?」
「……色々あったんだって(昨日ツナと宿題やってたのに変に意識しちゃって全く進まなかったなんて言えねぇ!!!!)」
「そう言うブスおんn……空音はやったのかよ?」
「ごっきゅん今のワザとだよね!?宿題はあいにくやったけどね!!!」
「昨日は空音が教えてくれて助かったぜ!」
山本君がそう言った瞬間、背筋に悪寒が走った。
…………なにこれ?いろいろと嫌な予感?おかしいなぁ?学校に着く前は絶好調だったんだけどなぁ?
理沙はチラッとあたしの後ろを見た後、立ち上がってあたしの肩を叩く。
「薄々気付いたとは思うけど、ちょっと廊下に来て?」
こう見えてもあたしは女の子だし、女の勘とかそういうのも少しは持ってたりする。
険しい顔の理沙と一緒に廊下に行くと、あたしの前を歩いていた理沙が振り返り、
「あんた……山本とキスした?」
「這這這買uッ!!!!!!??????」
まさかの展開!!!もちろんそんな事実はない!!!!
その事を理沙に伝えると、
「うあー、でもクラス内だとそう言う事になってるらしいんだけど。女の嫉妬は怖いぞー」
最後の台詞は茶化す様に言われた。でも理沙ははっきりと警告を出してる。
「なんでも、毎日一緒に登校するし、やたら山本と仲いいし、席も隣だし、ついでに言うと獄寺とも仲いいし、それに嫉妬した匿名希望さんはあんたの住処まで着いてっちゃったもんだから、住処ばれてキレちゃって山本ファンクラブも獄寺ファンクラブも大騒ぎ。それで噂の尾ひれがついてキスしただの、付き合ってて婚約済みだの、獄寺と2股してるだの恐ろしい噂が飛び交ってる」
女ってこえー!!!!!!!!!!
「まさかストーキングまでされてたとは……、山獄ファンクラブ合わせたらクラスの女の子達だけじゃないし……、先輩も多いらしいし……」
「その呼び方腐女子の集まりっぽいから止めようか」
「別に良くない?萌えるし」
「よくねーよ!!!!!!」
≪ボカッ≫
あたしを一発殴ると、理沙はまた真面目な顔つきに戻る。
「うん、僕が言いたかった事はそれだけ。あとはどうするか空音しだいだね」
「どうするって……」
「あの子達の誤解を解くなり、もう放っておくなりご自由に」
…………。
それだけ言うと理沙は教室の中に戻って行ってしまった。
いやー、なんか大変なことになってますねー。
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