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病院の真っ白い壁。
夏の風が病棟のカーテンを揺らしている。

隣を見ると小さく横たわって寝ているままのリョーマがいる。

「リョーマ…」
手塚は心の底からリョーマをいたわるような気持ちで名前を呼んだ。

幸い脳に異常などはなく今はただ単に寝ているだけなのだがやはり心配だ。


早く起きていつものように俺をその目で見てくれ。
生意気な口を利いてくれ。

手塚は目を閉じてそう祈るしか出来ない自分を呪っていた。


そんな時、病室のドアが開かれ青学のレギュラーメンバー達と竜崎先生、リョーマの父の南二郎が入ってきた。


「手塚、心配で来てしまったんだけど…越前は大丈夫なのか?」
大石が病室に入るなり手塚に駆け寄って問いかけてきた。

「あぁ。脳に異常も何もない。今はただ寝ているだけのようだ。だから大丈夫だ。」

手塚は腕を組んだままそう告げた。
まるで自分に言い聞かせるかのように…


「そうか…。良かった…」
大石は手塚の言葉を聞いた瞬間安心してホッとした。
その他のメンバーも安心したようだ。

「ったく…迷惑かけてこいつは」
そんな中 リョーマの父である南二郎がリョーマの横に立ちリョーマの頬を軽くつついた。

その様子を見て手塚は南二郎に謝らなければならないなと思い口を開けた瞬間だった。

「あの…」
「ん…」

急にリョーマが目を擦りながら起きあがろうとした。
その様子を見たため手塚の声は掻き消されてしまった。


「おチビ!!!大丈夫?」
「越前、気分はどうだい?」
菊丸と不二がその姿を見て話しかける。


しかしリョーマはきょとんとした表情でこちらを不思議そうに見ている。

「まだ寝ぼけてるのかな?」

「そうかもね」

菊丸と不二はそんなリョーマを見ながら微笑んでいた。


「ったく、心配したんだぞー!!越前!」
そして桃城がいつものようにリョーマに抱きついてじゃれていた。


いつものことだがこの様子を見るたび、手塚の眉間のシワが深くなる。


「っ…止めて下さいっ、痛いですっ」
リョーマが下を向きながらそう言って桃城を突き放した。

いつものように「痛いッス…」とリョーマから返ってくると思ってた部員一同はリョーマから発っせられた言葉にびっくりした。

「え?なんでおチビ今敬語だったわけ!!??」
菊丸はリョーマを見ながら笑ってそう言った。

「確かに。どうしたの越前?」
「イメージチェンジ…つまりイメチェンということか?」


部員全員がその新鮮な様子を面白がっていた。
だが………



「あの…、あなた達は誰ですか? それに僕はどうしてここに…」
リョーマは部員を見回して不思議そうに言った。

その言葉を聞いた瞬間
和やかムードから一気に張り詰めた空気が漂う。

「まさか…記憶喪失…?」
大石がボソッと呟いた。

部員達も驚きを隠せない。
その中でも一番驚きを隠せず、信じられないっといった顔をしているのが手塚だった。

「おい、お前まさか実の父親を忘れたわけじゃねーだろうな?」
そして南二郎がリョーマの肩を掴んでこっちを向かせた。

「親父…」
リョーマはどうやら南二郎のことは覚えているらしい。

「ねぇ親父…この人達は誰?」リョーマは南二郎を見つめたままそう告げた。


「お前…本当に忘れたのか?」
南二郎が口を開くより前に手塚が口を開いた。


「え? あの…すいません…僕…テニスを部活でやっていたのは覚えているんだけど…あなた達が誰なのか…」

リョーマは手塚をまっすぐ見つめて申し訳なさそうにそう言った。
しかもいつものリョーマには考えられない敬語だ。
そしていつもの強気な目ではなく少し目元が下がっている。



リョーマが…
俺を…忘れた…?
まさか…
昨日だって一緒に帰ってこの腕で抱きしめて…
俺のことを"部長"とうるさく呼んでくるリョーマが…
俺を…





手塚はリョーマを見つめたまま放心状態だった。
信じたくなかったし認めたくも無かった。


今までの日々が全て無かったことになんて出来ない。
俺のせいで…

手塚は自分を責めた。
自分が打った球のせいでリョーマが記憶をなくしてしまったのだ。


「で、でもテニスは覚えてるんだな?」
大石はリョーマに詰め寄ってそう聞いた。

「はい。僕はテニスが大好きで部長も………… ん?…今何て言おうとしたんだろう…」

リョーマは言いかけた言葉の続きを探すように首を傾げた。


「俺が部長だってことは覚えているか?」
その言葉を聞いた手塚はリョーマに話しかけた。


「部長…さん?」
そう呟いた瞬間、頭が痛くなったのか頭をおさえていた。

その時、病室のドアが開いて担当医が入ってきた。
どうやら乾が呼んできてくれたらしい。

その後、リョーマの事情を話してリョーマは診察室につれて行かれた。


    *-+-*-+-*-+


「…ということで記憶喪失ですね。」
医師はリョーマを検診したあとそう告げた。

どうやらリョーマはテニス部 レギュラーだけの記憶をなくしてしまったと同時に性格まで分からなくなってしまったようだ。

だけども、何かの拍子に思い出すかもしれないからレギュラーメンバーと話しをすることは効果的だと医師は告げた。



「とにかく話しをしておチビの記憶を取り戻そう!!」

「あぁ…それしかないようだしな…」

「こうなったら意地でも思い出させてやるッスよ!!」

菊丸と乾と桃城が前向きな発言をして落ち込んでるメンバーを元気づけた。

「手塚、君のことは必ず思い出すよ。さっき病室で越前が言いかけた言葉だって君のことだっただろ?」

不二は手塚の横に行って優しくそう言う。
その姿を見て他のメンバーも手塚の周りに集まって元気づけた。

「大丈夫ッスよ!!越前は手塚部長のことすぐ思い出すッスよ!!」

「そうだよ手塚!!あんなにラブラブだったんだし」


「あぁ…有難う」
手塚はこの時、動揺していたため気付いてないが…
レギュラーメンバー全員が手塚とリョーマの関係を知っている状態をこの時は手塚の頭には入ってこなかった。







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