アンタとオレの関係
-02 (SIDE KYO)
遼を早くあの部屋に連れていきたくて、急かした。
なんだか気の抜けた返事が返ってきているが、あの部屋を見ればこの反応は変わるだろう。
このホテルの最上階のスイートルーム。
もちろんベッドはキングサイズで1つしかない。
何より、部屋からの景色が素晴らしいんだ。
昼は大自然を楽しめるし、夜は夜で遠くにある町の灯りがキラキラと輝く。
本来なら、この部屋は会長である裕行に使用権があるのだが、この2週間余り仕事を頑張っていた俺へのご褒美だとかで、今回は俺に譲ってくれた。
部屋のドアを開けた途端、遼の顔が輝いた。
大喜びでリビングの窓まで走っていく。
………………やべぇ、カワイイ。
今すぐ押し倒したい衝動を堪えていたハズなのだが、いつの間にか遼を包み込むようにして抱きしめていた。
なんか文句を言っているが、聞こえない。
全てはカワイすぎるお前が悪い。
力を加えて抱きしめた華奢な身体は、固まったかのように動かなくなった。
遼の肩に顎を乗せる。
それと同時に香る、遼の髪の香り。
やばいなぁ…クラクラしてきた。
【好きだ】という感情が溢れだしそうになるのを必死に耐える。
まだ、俺はスタート地点にすら立っていない。
なぁ、お前は気づいてる?
今すぐこの気持ちを伝えられたら。
この身体を俺のものにできたら。
その目に映るのものを俺だけにすることができたら。
そんなことばかり、頭に浮かんでくる。
だけど。
まだ、信頼関係さえ結べていない今の状況では難しくて。
だから。
今日明日の2日の共に過ごす時間全てで、この距離を少しでも縮める。
そう決心した、その時。
ぐるぎゅ〜
……………………………俺が必死になって作り上げた甘い空気が台無しじゃねぇか。
所詮、俺らの関係なんてまだこんなモン。
こんなことでいちいち挫けていたら、進めるものも進めなくなる。
だから、まだ今は。
この距離が【普通】なのだと自分に言い聞かせよう。
『なんだ、腹減ってたのか?』
「………ハイ」
気まずそうな顔もカワイイな。じゃなくて。
『朝飯は?』
「朝が早すぎたので食べてまセン」
ぐるぎゅ〜
『プッ…わかったよ。じゃあ、下のカフェでなんか食うか』
「お…前!今笑っただろ!?」
『ハハハ、笑ってない笑ってナイ』
「言いながら笑ってんじゃねぇ!!」
財布と部屋の鍵だけを持って部屋を出た俺の後を遼がついてくる。
さっきよりは、近づけたかな?
今日1日でこの距離がどう変わるのか。
全ては俺の努力次第。
◆◇
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