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ドラマ


テレビを観ていると白い物体が視界に入ってきた。お陰様で昼ドラが見えない。昼ドラっていうよりあのどろどろ感が好きなのかもしれない。ベタな感じも好き。非現実的なところも好き。だから韓国ドラマも意外に好きだったりする。毎回見逃さずにテレビの前を陣取っているのだ。うん。つまりは暇人というわけである。毎日の楽しみが昼ドラしかない私にとって(それもどうかと思うけど)それを邪魔されることはこの上なく腹が立つ。むかつく。しかもこいつはそれを知っていてやってくるから尚更。あんたの苺牛乳残らず全部飲み干してやろうか。

「邪魔」

「気のせい」

「見えない」

「メガネは?」

「ないし」

「新八に借りれば」

「いらないっつの」

強行手段だ。銀時の頭を右手でがしりと掴みそのまま横へ倒す。抵抗しているようだったがそれも最初だけで諦めたようだった。たぶん、私の機嫌を損ねないように力に従ったんだと思う。銀時は私が昼ドラ好きだって知ってるから。
血が出るような生臭いシーンがないからいい。そりゃ勿論誰かが死んだ殺されたなんていうのはあるけれど、写ることなんて殆どない。あ、韓国ドラマはあるか。
私は自分でも分かるくらいにドライな性格してると思う。基本的には人と関わりたくない。面倒臭いことに巻き込まれたくないし、苦手だ。だから見てる分にはとても楽しい。修羅場とかほんとに最高。

「あ、やば」

「‥」

「律子ー」

「‥」

「死ぬー」

「こんなどろどろな話のどこがいいの?」

「自分に関係ないところ」

銀時の目を見ずに言った。それを承知の上で彼は質問を投げ掛けたのだ。ふーん、と納得したのかしてないのか分からない返事をした。どんな顔で言ったのかもテレビに集中していたので分からない。あと五分でドラマが終わる。どうせまたいいところで終わるのだ。律子、大丈夫かなあ。ふ、と気付くと声に出していた。最近主婦化しているような気がする。ああ、掃除、洗濯、料理はやらないからただのぐーたらか。
視線を感じる。言うまでもなくそれは銀時のもの。さらに口角が緩く上がっていた。昼ドラばかりに構っていたので何があったのか分からない。それを銀時は汲み取ったのかくつくつと笑い出した。

「何?」

「あれだな」

「は?」

「俺らには関係ねェもんな」

にやり。意地悪な顔。けれど私は知らない振りをする。どうかな。そんな挑発的な態度で銀時を揺さぶってみた。しかし彼もまた簡単に乗るような人ではない。また笑って私の隣に腰をかける。昼ドラも終わりテレビを観る必要はなくなったのでそっと消した。電源が落ちる音がやけに響く。そっと触れた手はどちらかからかぎゅっと堅く結ばれた。
私はドライな性格だ。そういう風に見せている。だから口に出せないことが沢山ある。そんな私の心を読むのが彼は得意だ。だから分かるはず。私が昼ドラを観るのが何故なのか。子供みたいな理由だけど、教科書代わりにしてるんだ。何かあったときの対処法。ま、何もないとは思うけど。
私は彼に体を任せ瞼を閉じる。すると頬に熱を感じた。


ドラマ



100417
一壱子

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