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映画備忘録
ヴェノム(2018/11/02)

 MCUシリーズでなく、『アメイジングスパイダーマン』でポシャったりしていた企画のリブート作品。ソニーユニバースシリーズの第一作的なそれである。
 『スパイダーマン3』でも登場したヴィラン「ヴェノム」を主人公にしたダークヒーローもの。とはいえ、従来作品とは関係がなく、完全に独立した新作となっている。

 正義感の強い報道記者、エディ・ブロック。社会の構造として切り捨てられていく弱者に肩入れし、強者の隠す悪事を暴く。そんな男。
 だが、感情が先行しすぎたか。気づけば職を失い、恋人に振られ、日々の仕事すらままならない負け犬となっていた。
 しかし、ある日。かつての強引な報道を覚えていた一人の女性科学者がエディに接触する。女がリークしたのは製薬や宇宙開発など幅広く手がけるライフ財団の暗部。宇宙生物シンビオートを用いた人体実験の真相だった。
 女の手引きで財団に潜入したエディだったが、そこで一体のシンビオートに寄生されてしまう。
 凶悪な力、獰猛な性。シンビオートは自らを「ヴェノム(猛毒)」と名乗るのだった。
 ヴェノムに寄生されたエディの運命は、ライフ財団を率いるドレイクの野望とは、それはそれとしてエディは元カノのアニーと寄りを戻せるのか。
 ともあれ、最凶最悪のダークヒーローがここに誕生した――!

 的なお話。
 寄生だの最悪だのと物騒なワードが散りばめられているが、実態としてはエディとヴェノムの一風変わったバディものとなっている。本作でも用いられるヴェノムの代表的なセリフ「We are Venom.(=“俺たち”がヴェノムだ)」が象徴的。
 物語開始当初はなんともロクデナシ感全開なエディだが、ヴェノムに寄生されてからはどんどんとそれどころでなくなり、ついには躊躇いなく強烈な一発を見舞う程度にはかつての意気を取り戻していく。
 それはやはりヴェノムの存在が大きく、同時にヒロインである元カノのアニーの支えあればこそ。
 というか、エディは本当にロクデモない。序盤は本当にいいところがない。まあ、悪いヤツじゃねえんだけどな……、があまりフォローにならないくらいにはひどい。
 そんなロクデナシ男が寄生生物バディと共に人知れず地球を守っちゃうのである。こういうのが好きな諸兄、思う存分ニヤついていいぞ。

 見所としてはやはりヴェノム大暴れ。バイクをぶいぶい言わしながら財団の刺客から逃れるべくサンフランシスコを爆走し、迎撃ついでにぶち殺す。
 例の黒いドロドロがこれでもかというくらいに奇想天外な変化を見せ、人知を超えた力で刺客を翻弄する。この手の作品の常として、夜の暗さがネックではあるがそれが逆にクールに感じる程度には魅せてくれる。
 個人的推しポイントは進行方向を塞がれた際、街灯を掴み、それを軸に強引な旋回。横滑りするバイクとアスファルトの間にドロドロを挟んでクッションにしてしまい、見事な方向転換を成し遂げてしまうのである。まさにヴェノムにしかできない荒業。これには刺客も呆然としてしまう。
 もう一つは機動隊に囲まれた乱戦。隊員の脚を引っつかんでブン回す。敵は武器だ、とでも言わんばかりの大暴れっぷりは完全にヴィランのそれである。これはスパイダーマンにゃできねえわwwwってなもんですよ。

 やはりというか当然というか。多分スパイダーマンを意識したんだろーなー的なシーンも散見される。
 お前スパイダーセンスあったっけ?というくらいにヴェノムは感がよかったりする。もちろんビルの外壁も登る。割と力ずくで。
 ビルの天辺からサンフランシスコの夜景を一望するシーンは白眉だと思う。狭い足場に座り込み両手両足で支える。スパイダーマンでもよくあるカットだが夜空の暗さよりなおヴェノムが黒いのである。スパイダーマンの赤とは異なる、シビれるようなカッコよさがある。
 本編では(多分)なかったが、予告編では「大いなる進歩には大いなる犠牲がつきもの」的なセリフをヴィランのドレイクが発している。いうまでもなく「大いなる力には〜」のオマージュであろう。

 難点としては、やっぱりというか、アクションがやや観にくいところ。
 ただでさえヴェノムはぐにゃぐにゃと変化する上、夜間や暗所での戦闘が多いので黒い身体は一層見づらくなる。
 ラストバトル、ドレイク変じるライオットもヴェノムと同じくシンビオートの寄生した人間であるため、パッと見ではほとんど見分けもつかなくなってしまう。せめてブラックパンサーとウォーモンガーくらいの区別はほしかった。
 まあ、二体のシンビオートがくんずほぐれつ、どっちがどっちだが分からないくらいの激闘も悪くはないが。見づらいのはいかんともしがたい。

 立ち上がりの遅さも気になるところ。
 序盤は如何にエディがロクデナシかを懇切丁寧に描かれる。そのためにヴェノム寄生までがやや遠く、億劫に感じられてしまう。
 先述の通り、エディは割と救いがたい程度にはアレなのが退屈を苦痛にさえしてしまうのである。
 といっても、喉元過ぎればなんとやら。ヴェノム寄生からはジェットコースター的に超人バトルの時間に突入する。「待たせたな!」ってなもんである。

 なんのかんのと終わってみれば気持ちのいいバディものでした。エディの元カノ関係に口出ししてくるヴェノムからは『スパイダーマン・ホームカミング』のカレンを彷彿とさせるコミカルさを感じてしまう。
 どうしてヴェノムはライオットに敵対し、地球を守るつもりになったのか?という点について。エディを気に入った、という以上にアニーを気に入ったんだろうなあと思う次第ですよ。
 ぶっちゃけ今作のヒロインは誰だ、と聞かれたらヴェノムだと思います。それはそれでどうなんだ。
 さてここから始まるソニーユニバース。ここから色々な作品が続いていく様子。今作のラストにも次のヴィランがお披露目?されている。
 是非ともMCUに負けないくらいの展開を期待したいところ。

 採点:80点
 バトルと日常、どちらでもヴェノムの魅力が光る。もう少し尺があれば序盤の不満を晴らせるだけの満足感があったろうか。

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あきゅろす。
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