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映画備忘録
仮面ライダー 平成ジェネレーションズForever(2018/12/22)

 現行作品『仮面ライダージオウ』の劇場版であり、また、2016年から始まる『平成ジェネレーションズ』シリーズの第三作。
 平成という年号自体が変わる節目となるため、「平成ライダー」という括りから見た総決算的な作品になっている。

 ある日、普通の高校生・常盤ソウゴは本当に普通の高校生となっていた。そんな彼の前にアナザー電王が現れるのを切欠に、ゲイツやツクヨミまでもがあたかも普通の学生であるかのように振舞い始める。
 一方、新世界で生きる桐生戦兎と万丈龍我は謎の少年・シンゴとそれを追うアナザーWと遭遇する。
 シンゴを中心に引き合うようにソウゴと戦兎、ライダーたちは出会い、アナザーライダーを相手に共闘するも。続発する記憶障害を追う中で驚くべき真実を知ることとなる。
 ――仮面ライダーはテレビ番組の中だけの存在で、実在しない。
 謎に包まれた少年シンゴ、それを追うタイムジャッカー・ティード。虚構と現実が入り混じりながら、仮面ライダーの戦いは壮大なフィナーレへと加速する。

 と、なかなか大胆なストーリーになっている。
 物語の展開も虚構の世界(=ライダーの存在する世界)と現実(=ライダーの実在しない世界)を行き来し、さらに時間渡航によって過去と未来が入り混じる。子供向け作品としては割と複雑な構成。
 とはいえ、クライマックスに向かうにつれ、どちらがどちらと把握が困難になるのは「もはや虚構も現実も関係ない」とばかりの力強さがあり、むしろ心地よいとも思える。どこまでが脚本の計算かは分からないけどね。
 キャラクターのセリフが作中に留まらず、スクリーンを超えて観客に語りかけるようなシーンもあり、まさしく20年にわたる平成シリーズを愛したファンへのメッセージ性に富んだ作品といえるだろう。

 これだけ書くとメタ的な要素が強そうだが、それ以上に既存のキャラクター・ストーリーに根ざしたものとなっているので安心。
 特に「ライダー=自分たちは実在しない」という事実をしっかりと受け止めた上で行動を迷わない戦兎は本当にかっこいい。その根幹にあるのも取って付けたような理屈ではなく、『ビルド』の物語で培われた精神性であるため大いに感心させられる。まだ完結から半年も経っていないというのに驚くほど先輩ライダーしている様はなんともいえず感慨深い。
 本来であれば新世界には存在しないはずのポテトとヒゲ、もといグリスとローグが登場する点もしっかりと今作独自の理由付けが成されているあたりからも既存作品への真摯な敬意が見受けられる。
 『ビルド』というシリーズにとって一つの区切りとなる作品として十分なクオリティに仕上がっている。
 個人的には「天才物理学者に、未来のマシン――ベストマッチだ」のセリフが最高に好き。原作ではなんともアップダウンの激しかった戦兎だが、なんという頼もしさだろうか。

 基本的に物語に登場するのはジオウとビルドが主だが、クライマックスではクウガから始まる主役級ライダーの総出演となる。もちろん本人客演などはないが、アーカイブ音声を多用することで従来のオールスター作品とは異なる見応えを与えてくれる。
 ドライブの「行くぜ、ベルトさん」『OK, Start Your Engine!』でボロ泣きしたことを白状しておきます。ただのアーカイブでなんであそこまで泣いてしまったのか。演出の妙だろうか。久しぶりにウィザードのキックストライクを見れたのも嬉しかった。
 もう一つドライブ。ライダーたちがバイクで戦闘員軍団に突っ込んでいくシーン。バイクなので当然直線的な軌道になる中、ドリフトかけて戦闘員をなぎ倒していくトライドロンがえげつなくて笑った。面積が違うよ。
 とはいえ、今回のレジェンドライダーに関してのトップはやはり電王なのだろう。今さらではあるが詳細は伏せておくこととする。確かみてみろ!

 仮面ライダーを通して兄弟の絆が繋がっていくストーリーも満足度が高く、素晴らしい作品となっている本作。
 とはいえ、やはり首を傾げたくなるところもある。
 何かといえばやはりW周りの描写だろう。ストーリーの主軸となっているのはあくまで電王であり、W関連はどうにも薄味に感じてしまう。
 実際、Wウォッチの登場は唐突。アナザー電王とは異なりアナザーWに変身していたのが何者かも分からずじまい。Wからの客演もなく、ともすれば『ジオウ』におけるWの活躍がこれきりになるのかと思うとなかなかひどいのではなかろうか。
 しっかりと確かめた話ではないが、製作サイドはギリギリまで菅田将暉の客演を望んでおり、それが実現しなかったことでこのような内容にならざるを得なかったとか。そういう感じらしい。悩ましいものである。
 あとジオウ組は微妙に薄味だった気がする。いや、活躍してはいるんだけどビルドや電王が良すぎてね。どうしたって積み重ねに差がある現行作品のジレンマともいえる。

 ともあれ素晴らしい作品だった。最高の満足感。特撮ヒーローという枠組みを超え、創作を愛することにまで想いを馳せてしまう。
 ジオウ本編もまだまだこれからの作品。楽しんでいきたいと思う。

 採点:90点
 やはりW関連が足を引く。とはいえ実質最高得点と思っていただきたい。

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