山茶花の小説
3000HITリクエストでロスカノ その6

 数日後、アイオロスが鍛錬場へ向かうべく石段を下っていると、蟹座の聖闘士デスマスクが自宮の前で海界の海闘士の一人となにやら親しげに話しているところに行き会った。
 いくら聖戦が終わったとは言え、12宮のこんなところまで他の陣営の戦士が上がりこんでいるのは問題だろうと思って苦々しく思っていると、当のデスマスクが手を振って声をかけてきた。

「お〜い、アイオロス。ちょっといいかい?」
「何の用だ、デスマスク?」
「いや、こいつを紹介してやろうと思ってね」
 鱗衣を纏った海闘士を顎でしめす。
「初めまして、英雄殿。海界の海闘士シードラゴンのカノンと言う。以後よろしく頼む」
「あ、そっちかよ」
「一応今は公務中なので、このマスクは取れない。髪を仕舞うのが大変なのだ」
 
 デスマスクと海闘士がなにやらこそこそと密談している。蔑ろにされた気がして軽く咳払いすると、海闘士が右手を差し出してきたので、その手を握りながらこちらも名乗りを上げる。
「射手座の黄金聖闘士アイオロスだ。こちらこそよろしく」
 深く被られたマスクの下を覗き込もうとしたが、幾重にも重なったシールドに邪魔されて果たせなかった。
 それよりもほんの一瞬だけとはいえ、重ねた掌に流れた何かの気配の方が気になった。

「だが、海界の海闘士がなにゆえ聖域におられるのだ?」
「この度は公務でな。先日の自然災害の件でシオン教皇と、アテナのご署名を戴かなければならんのだ」
「なるほど、ご公務ならば問題ないな。気をつけていかれよ」
「喰われるなよ」
「あぁ、有難う。気をつけるよ」

 教皇宮やアテナ神殿のある上宮に向かった海闘士にデスマスクがかけた言葉が気になって、その日の鍛錬は余りぱっとしない結果に終わった。
 帰り道にやはりちょっと気になったので、教皇の間がある教皇宮に顔を出す事にした。途中、教皇の間の控えの間にある執務室に寄って仕事に明け暮れているであろうサガの様子を見てやろうとするが、幾重にも封印がなされていてなかの様子を伺う事すらできない。
 普段ならば、封印どころか鍵さえ掛かってない有様なのに、訝しく思いながら教皇の間に向かう。

「海闘士?はて、そんなもの此処へは参っておらんぞ」
「本当ですか!?私が見かけた時から既に3時間以上が経過しているはず。そんなにも長い間行方知れずとなると、やはりあやつはポセイドンの間諜に違いない!」
 拳を握り締め、熱く決め付けるアイオロスにシオン教皇は人の悪い笑みを浮かべて言った。
「まぁ、待つがよいアイオロスよ。その海闘士は海龍を名乗ったのであろう。ならば、行く先にはわしに心当たりがある。どの道3時間もたっておるのであれば、そのうち姿を現すであろう」
 どうせ今頃には喰らい尽くされておる頃じゃろうしのうと嗤う、シオン教皇のにんまりとした人の悪い笑みが気にかかる。

「失礼する。シオン教皇はおられるか?」

 入り口の重々しい扉をあけて、双子座のサガが顔を覗かせる。こちらと眼が合うとつかつかと歩み寄り、手に持った羊皮紙を差し出す。
「なんじゃな、これは?」
 不思議そうに問い返すシオン教皇にサガはこのたびの自然災害における報告書だと答えた。
「そんな事は一目見ればわかる。わしが聞いておるのは、それを何故お前が持ってくるのかということじゃ」
「そうだ!これをもってきたはずの海闘士が行方不明なのだ!きっとあいつは、ポセイドンの放った間諜にちがいない!」
 お前もそう思うだろと、同意を求めるアイオロスにサガは困ったようにいった。
「残念だが、あの海闘士はそんな大層な物ではない。気分が優れないと言うので、私の執務室で休ませているよ。そういうわけですので、代わりに私がご署名を戴きに上がった次第にあります」

「サガよ、ひさびさの魚料理は旨かったかぇ?」
 シオン教皇がまたしても人の悪い笑みを浮かべた。

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あきゅろす。
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