過去拍手 雨に濡れる 土方視点 「雨に濡れる」土方視点 ある日、外は土砂降りだった。 午前中からシトシト降り出した雨は、午後になると何倍にも激しさを増した。 煙草を買いに行くのも億劫だった。そして二コチンが切れてイライラしだした俺の元に、さらに一通のメール。 『土方さんが居ないなら死にたい』 とうとう頭がおかしくなったか。 最初に浮かんだのは冷めた感想。 俺は、一週間前あいつに別れを告げた。もう俺達はダメだと思った。一緒にいても、お互いのためになることがないと思ったから。 いや、むしろ一緒に居てはいけないと思う。 好きなのは事実なのに、あいつの存在は重たくてこのままだと引きずられそうだった。 顔を見れば、きっと抱き寄せてしまう。それではいけない。あいつのためにもならない。 だから、電話で一言「別れよう」と言った。 もう一度やり直せたらいい。でもお互い今のままでは意味がない。とりあえず距離を置いてみようと思った。 溜め息を吐きながら、無意識にポケットを探る。ああ、煙草がない。 俺はいったん携帯を閉じた。窓に降り注ぐ滴を遠目に見る。 雨の音はうるさくて、冷静な思考を邪魔させる。 『死にたい』だと。 誰が、行くか。 甘えている。依存している。本当に鬱陶しい女だ。 俺は立ち上がって、廊下に出た。向かって山崎が歩いてくるのが見えた。 「あれ、副長出掛けるんですか」 「煙草買いにいく」 俺だって、この一週間お前のことを考えていた。触れたいと思っていた。 俺が居なくても平気だなんて、そんなこと言って欲しいわけじゃない。 本当は、心のどこかでお前からの連絡を待っていた。 屯所の出口まで来ると、俺は立ち止まった。 思っていたよりも雨はひどい。 傘は、いらない。 こんな雨の中だったら、お前に引きずられてどこまでも落ちていける気がする。 [*前へ][次へ#] [戻る] |