ようこそ

「今から、社長達が会議を行っている47階お連れしますね。」
ヴァンクールとサギリが女性についていくと、エレベーターの中にはすでにまた別の女性が立っていた。

ヴァンクール、サギリ、そして案内の女性。3人でエレベーターに乗り込むと、俗にいう"エレベーターガール"はニコニコしながら、ズラリと並んだボタンから会議をしているという『47』を押した。

よく見ると、2階から7階までのボタンが見当たらない。
「なあ、ヴァンクール。まさかあのエントランスが7階まで吹き抜けているのか?」
サギリは隣に立っているヴァンクールに話しかけると、ヴァンクールは
「高い天井だったもんな。」
と感心したように呟く。

エレベーターの階を表す数字の変化の早さが尋常ではない。
その早さはこのエレベーターの速さを示していた。

「ピンポン…」
エレベーターが上品な音をたててゆっくりと止まった。

「47階になります。」
中のエレベーターガールがゆっくりと礼をしたのちに、扉が開いた。

先におりたのは案内役の女性で、続いてヴァンクール、サギリと続いた。

エレベーターをおりると、無駄に広いそして長い廊下があって、その一番奥に美しい漆をぬった木の両開きの扉があった。

「どうぞ。」
と案内役の女性が扉へ手を向けた。"入ってください"ということなのだろうか…。
ヴァンクールがサギリの方をチラリと見ると、サギリは一度だけうなずいた。


ガチャッ…


ーーーー


扉をくぐると、目の前には何もない。
しかし、少し目線を上げれば、さまざまな人物と目があった。

要するにその場にいる数十人全員に見下ろされていた。

(この風景…)
ヴァンクールは目を丸くして辺りを見回す。
どこかで見たことのある構図なのだ。

『ほら、たぶん。カストレの尋問室だよ。』
マリが低い声で呟いた。
(ああ。)
ヴァンクールが思い出したように語尾を高めて、しかしどこかイライラしたように答えた。

正直、いい思い出ではないから。


ーこの会議室は全員が高めの椅子に座っている。
きっと、今日みたいな"客"を見下しながら話を進めるためだ。

「よっ!」
不意に聞きたくもない、陽気な声が耳に飛び込んでくる。

サギリとヴァンクールはほぼ同時に顔を上げて、声の発生源を見た。

「…サラバ。」
ヴァンクールは眉間をしわくちゃにして会議室の真ん中の椅子に座っているサラバを睨み付ける。

「用はなにかにゃ〜」
サラバが手を猫みたいにしてふざけた声で笑いかける。

するとサギリが一歩前に出て、
「私はファルクスカンパニーを辞職しようと思う。」

サラバはその言葉に目をまるくして、
「えっ?
S班やめちゃうの?
いい仕事っぷりだったのに。」

「じゃあ俺たちは帰る。」
ヴァンクールが背を向けると、
「ヴァーン!」
サラバが不意に名前を呼んだ。

「…わかってるさ。」
ヴァンクールは低い声で呟いた。

そして、右手に心刀マリを召喚する。
「ヴァンクール!?」


するとサラバは
「俺が簡単に帰すわけないもんね。」
と言って、笑った。

ヴァンクールはその笑い声とほぼ同時にパンッと銃弾をサラバに向かって放った。

キンッ!
しかし銃弾はなにかによって弾かれてしまう。
「はは!
お前たちは47階にいるんだろう。
俺たちは48階にいるんだ。」
その瞬間、ブシュウッとなにか気体の破裂音のような音が聞こえた。

「しまった!毒だ!」
サギリが叫ぶ。
ヴァンクールは入ってきた扉を破壊しようとするが、びくともしない。

「チッ!」


サラバは47階と48階の間にある見えない天井に降りてきた。
下から見ると浮いているようだ。

サラバはヴァンクールににっこりと笑いかけた。
「ちくしょう…。」

「ようこそファルクスカンパニーへ。

アハハハハハハハハッ…!」


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あきゅろす。
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