侵入

アシェルはベッドの上でゴロゴロしながら本を読んでいた。

『アシェル、難しそうな本読んで…偉いね〜』
フレイルはアシェルの隣でニコニコしながらベッドにもたれかけていた。

(まあな。この本はアストラシアの人間がカストレについて論じているものなんだ。)
アシェルはページをめくりながら呟くと
『よくわかる?
知らなかったこととか。』
フレイルは興味津々で本をのぞきこむと

「やばいやばいやばいやばい…」
アシェルの後ろから謎の声が聞こえた。

「何がヤバイんだー?」
アシェルの視線はいまだに本の文字であるが、声の主である軌跡にアシェルは尋ねた。

すると、ペチン!とアシェルは尻を叩かれた。
「?」
アシェルが振り返ると、
「ヴァンクール達が捕まった!」
と軌跡が眼帯を適当に結びながら大声を上げた。

「はやっ!」
アシェルは正直かなり驚いていた。
ヴァンクールとサギリがこんなに早く捕まるとは思わなかったのだ。

「一応、視界はサラバってやつに移動させた。
だから、ちょこちょこ様子は伺うつもりだ。」
軌跡はヴァンクールの意識がなくなる前に、目があっていたサラバに視界をうつしていたのだ。
つまり軌跡が眼帯を外して能力を発動させると、軌跡の視界にはサラバの見ている風景が見える。


「今から行くか?」
アシェルがパタンと本を閉じてゆっくりと立ち上がった。
『ファルクスカンパニーの警備は厳しいと思うけど…。』
(そう、だよな…)

「俺は一度だけ能力でファルクスカンパニーに侵入したことがある。
でも、能力者の話とかはなかったから、意外と強行突破できるかもな。」
と軌跡は立ち上がって笑った。

アシェルには強行突破はあまりいい案ではないと思ったが、他に案はなさそうなので
「わかった。」
と扉へと向かった。

「アシェル。
俺は戦う意思のあるやつは殺すから。」
と軌跡が急に真面目な様子で呟く。

アシェルは一旦止まって、振り返らずに
「わかった。
大丈夫だ。」

とドアノブに手をかけた。
ーーーー



「ここから、」
軌跡はファルクスカンパニーの正面玄関がある裏側に来ていた。
「裏口…か。」
アシェルは正面と比べてほとんど人のいない裏口に少し驚いていた。

軌跡は辺りをキョロキョロしながら、裏口の小さな扉の前に立つ。

「この服装は目立つだろ。ここの人間はスーツなんだ。
パット見わからないように、入ってすぐにここの社員を襲うぞ。」
アシェルがうなずくと、軌跡は笑って扉へ顔を向けると着物の帯からごそごそと何か金色に光るものを取り出した。

「かんざしか?」
ものすごく細い、先に鮮やかな花の装飾のついた美しいかんざしだ。

「まっ、見てな。
これはサギリ姉さんに渡そうと思ってたんだけど。」
そういいながしながら、扉のドアノブの鍵穴にかんざしを突き刺しガチャガチャといじった。

そして、ほんの数秒もかからないうちに
「カチッ」
と鍵が開いたようだ。

「なんでも出来んだな。」その言葉に軌跡はにっこり笑う。
アシェルは苦笑いしながら軌跡の白い歯を見つめた。



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