気楽な朝
そして決勝戦当日…
「ヴァン!」
ドンドンッドンドンッ
「シエル…?」
激しく扉をノックする音にヴァンクールは目を覚ました。
ガチャ…
「おはよう〜」
シエルとヒロが部屋の前に立っている。
「…もうそんな時間なの?」
ヴァンクールは携帯で時間を確認すると、時計はまだ9時をさしていた。
「まだ9時じゃんか。」
「甘いわ!
私たちがここに来た理由は…ヤマトついて話すためよ!」
ヴァンクールはハッとした。
「そういえば、教えてくれるって言ってたなー
ちょっと着替えるから、シエルは外に出てくれないか?」
ヴァンクールは笑いながらいうと、意外にも(どうせヒロにはバレないようにだが。)シエルはうなずいて部屋から出ていった。
ガチャンと扉が完全に閉まったのを確認してから、
「お願いがあんだ。」
「どうしたの?」
ヒロが入り口で腕を組みながら静かに答えた。
ヴァンクールは着ていたタンクトップを脱ぎ捨ててから、ベッドサイドに置いてある小さな紙袋に手を伸ばす。
「これをいつでもいいからシエルに渡してくれないか?」
ヒロは紙袋を受けとるなり、
「あのカチューム…?
買ってあげたんだ。」
と笑った。
「まぁどうせ今日中に俺から渡すことなんか出来ないし。」
「今渡せば?」
ヴァンクールはブイネックのTシャツを着ながら
「なんか照れ臭くて、試合に集中出来なくなるし。」
(ダメね〜ヴァンったら。)
マリがクスクス笑う。
「まぁわかったよ。試合が始まる前に渡すから。」
そう言った瞬間、ヒロの手元の小包が消えた。
「わっ!」
ヴァンクールは目を丸くしている。
「どうせ宿に帰るしね…
先に部屋に送ったの。」
そう言いながら、オートロックの扉を開いて、
「シエルもういいよ。」
と、シエルを部屋に招きいれた。
「よし!じゃあ教えてやろう!」
シエルはビシッとヴァンクールを指さし、
「ヤマトの武器のテクニックはすごいよ。
あと、あたしがあれくらいの突きで気を失うわけない。なんか能力を使ったんだよ。」
…
…
……
「それだけ?」
シエルは自信満々の顔でうなずいた。
「能力はわからなかったんだよねー」
ヴァンクールはそれを聞いて口を押さえてクスクスと笑った。
「何よ!」
「いやいや。
わかった、その謎は俺が解明してくるよ。」
ヴァンクールが楽しそうに笑っているのを見て、ヒロもクスリと笑う。
「シエル。そろそろいこうか。2人が待ってるから。」
シエルは笑顔でうなずいた。
「じゃあ。ヴァン後でね。頑張ってね」
ガチャン。
急に静寂が訪れた。
ヴァンクールは大きな伸びをして、ベッドサイドにあるバンドガンに弾をつめながら、
(勝てるかわかんないけど、頑張ろうな。)
『うん!怪我しないでね。』
(今日は調子がいいかも。)
色んな体の部位を伸ばしながら、ヴァンクールはうなずいた。
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