間違い

ヴァンクールとサギリはコロシアムを出て町に出ていた。

「ねぇ。どこ行くの?」
サギリが優しい口調で話しかけると、
「まあまあ。」
と焦らされた。

ヴァンクールの行くところへついていくと、一件のアクセサリーショップだった。

カランッ

今は夜なので、客はほとんどと言っていいほどいなかった。
「いらっしゃい。」
若い店員が笑顔で迎える。
ヴァンクールはずかずかと店員の元へ向かい、
「これ。」
と言って、ショーケースの中の太めのカチュームを指さした。

「はい。12000ギルですね。」
後ろでぼーっと見ていたサギリは
「高っ!」
と後ろによろめいた。

ヴァンクールはむっとしながら、ポケットから封筒を取りだして、中の札を抜き出した。
なれた手つきで札を数えて店員に渡す。
封筒には"サルボナ銀行"と書かれていた。

サギリは
(あの女の子にプレゼントするのか…)
と感心しながら、その微笑ましいといえる光景を見つめていた。

「シエルがほしいって言ったから買ってやるだけだからな。」
サギリの方を見ないで急にヴァンクールは一言。
サギリは心を詠まれたのか、内心ドキッとしたが何も言わずに平常を保った。

(素直になればいいのに。)
サギリはちらりと美しい顔で店員を見る。
…店員がラッピングをしながら暑い視線を向けていたからだ。

「お前はあんまり喋らなかったらクールなのにな。」
「あんたは見た目と、性格そのままだよね。」
ヴァンクールは驚いた顔で小さな紙袋を受け取りながら振り返り
「まさか。お前もシエルとおんなじ趣味が…?」
とおどおど言うので
サギリは目を丸くして
「わからない。シエルの趣味ってなんなんだ?」

店を出るなり、ヴァンクールは小さな声で
「ほら…あれだよ。男同士が…ラブラブするやつ。」
すると急にサギリはクスクスわらいだす。
「いやいや、残念ながら私にそんな趣味はない。
なんで今の会話だけでそんなこと思ったんだよ。」

ヴァンクールは誰から見てもわかるくらい、ホッとした顔をして
「よかった〜
普通は性格と顔があわないって言われるんだが、シエルだけは俺の顔が性格のまんまだって言い張るもんで。
なんでだよ?って聞いたら、『超ツンデレで性格も顔も"ねこにゃん"じゃ〜ん。』って笑いながら言われた。
それがどういう意味かわかったのはだいぶ後だけど。」
(うわぁ〜それ本人にいうんだ…)
サギリはシエルの凄さに唖然だった。

すると
「私、あんたを誤解してた。」

ヴァンクールは急な一言に片方だけ眉を下ろす
「はぁ?」

「私、あんたとはあんまり会ったことなかったから…
それで、あの事件があって…。
私はあんたを冷酷で最低なやつだと思っていた。」
ヴァンクールは何も言わずにじっと見つめている。

「あんたのせいじゃないみたいだし、あんただって笑ったりするんだ。って、
私は最低だ。
好きな人の弟を殺す気だった。
ラインが一番私を嫌いになることをしようとしてた。」
2人は泊まるホテルの下まで来ていた。

「ごめんなさい。」
サギリは頭を下げた。
ヴァンクールは目を細めて、
「やめてくれ。
きっと俺に干渉しないのが一番だよ。」
サギリは頭をあげる。

「私はアストラシアに契約を破棄しに行こうと思う。
まぁ、明日頑張ってくれ。」
サギリはさらさらの髪をなびかせて後ろを向いた。

ヴァンクールはその黒髪を見えなくなるまで見つめていた。


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あきゅろす。
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