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「お前は、違うだろ?」
首を傾げながら、耳を赤くしながら。
そう、小さく笑う会長に、俺も自然と笑みがこぼれる。
「俺が......。俺が、好きなのは、お前なんだ。あいつじゃねぇ。」
「......うん。」
「それでもあいつんとこ行けっていうのか。」
「ううんっ。いわ、ない。」
震える腕を懸命に伸ばす。声が震えて、カッコ悪い。
だけど、しょうがない。これが俺なんだ。
泣くのを我慢しただけ、ほめてほしいくらいだ。
会長が、クツリとかっこよく笑う。
この人の大きさは知っているはずだったのに。
なんだか、どこまでも。どこまでも救われた気分だ。
「かいちょ、う......。」
「さくらば。」
伸ばした手を掴まれる。
どくどく、と酷く脈打つ熱に、身体の全部が熱くなる。
触れ合う肌はほんの一部で。だけど、そこから会長の熱まで伝染するみたいに。視線が離せない。
身体が勝手に引き寄せられる。
ーーあぁ、この人が好きだ。
そう強く思う。
「かいちょ、」
「こらあ!? 桜庭っー!」
「おわっ!」
唇が触れ合う寸前、真横の扉から飛び出してきた人影に、会長の腕を咄嗟に掴み後ろへ下がる。
なんだっ、何事なの!
急ぎ、視線を移してみれば。あぁ、......納得というか。なんというか。
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