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書類、しょるい。
そう聞かれて思い付くものは山程あるが、昨日までに生徒会室へ届ける書類と聞かれて、思い付くのはアレしかない。
あの、来週転校予定の転校生名簿。
名簿と言っても一人しか載っていなかったが、そう言えば昨日期限だったような気がする。
冬至がその存在をしらないとあらば、その管理をしているのは、俺しかいないわけで。
「おい、桜庭。貴様。」
「あー。ほんとごめん! 三日くらい前に先生が渡しにきたあれだよね。転校生の書類。すっかり忘れてて。」
きっと、鬼のような表情を浮かべているだろう冬至をあえて見ずに、机を漁る。
たしか、ここらへんに。
と。
指先に冷たい金属の感触。
「わっ。あった、あった。」
それを引き抜き、なかを確認する。よし。
紙の束はきちんとクリップで留めてあるし、抜け落ちているものもなさそうだ。
「会長。ほんとにごめんね。この存在、すっかり忘れてて。」
書類を手渡しながら、ひとつ、怒声をもらうの覚悟で頭を下げる。
この忙しい時期、会長直々に風紀室へ足を運ばせてしまったのだから、これくらいの謝罪はしなければならない。
いくら、風紀副委員長になったのが不本意だからと言って、彼の仕事を邪魔する権利など俺にはないのだから。
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