7 「近々、俺の家とお前の家。あとバ会長の家で仕事をするらしいな。大きな仕事だと聞いた。失敗できないとな。」 先ほどよりい幾分か大きく声を出す冬至に違和感。誰かに説明をしているような、聞かせているような。そんな違和感。 「だからだろう。お前がバ会長に近づいたのは。」 「は?」 「この仕事があったから近づいたんだろう。息子同士仲が良いほうが都合もいい。」 「え、ちょっ」 なに言ってっ。 咄嗟のことに反応できない。 まさか冬至がこんな検討違いのことを言うなんて。今日の冬至は、俺の予想の斜め上をいくらしい。 「はあ......。ごめんけど。俺はそんなこと全然、」 ーー考えたこともない。 そう言おうとして、後ろから聞こえた音に振り返る。 ドアに何か当たったのか、それはカコーンと間抜けな音を響かせて。 先ほど閉め忘れていたらしい。 少し開いたドアの隙間に、 「え」 俺は別に目が良いほうじゃない。 だけど俺ははっきり見た。 遠ざかる足音。床に落ちたペン。 あぁ、もうどうしよう。 両のポケットを探る。やはりハンカチはない。 あぁ、もう困った。 早く、追いかけないと。 [*前へ][次へ#] [戻る] |