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長い前髪に隠された目は相変わらず見えないけど、その表情は明らかに怒っていて。
俺が彼になにかをしただろうか。
こんな感情をぶつけられるなにかをしただろうか。
頬が痛い。じんじんと熱をもって。
口のなかは変わらず血の味で。
「ちょっとあんたっ。桜庭様の言うこと聞きなよっ! それに会長様が迷惑されてるのは本当だし!」
「嘘つけ!! そんな訳ないだろっ! 理巧は本当は俺が好きなんだ! でも恥ずかしくて言えないだけなんだっ。お、おれだって理巧がっ、すーー、」
「ーー黙って。」
無意識に、口から言葉が飛び出した。
驚いたように俺を見上げてくる彼を、その場で見下ろす。黒髪の隙間から見える大きな目が、酷く邪魔で仕方ない。
「あのさ。」
「ぇ、......あ」
「君は、......君はいいよね。なにもしなくても会長に好かれてて、それで。......それで、君も好きなら両想いってやつじゃないの。お、れは、全然そんなの。」
目頭が熱い。
床がぐるぐると回る。止まらない。
ただ、好きなのに。
「だからさ。もう、さっさと。......付き合っ」
「桜庭っ!」
声の鋭さに肩が震えた。
一瞬、誰の声か分からず聞こえた方へ顔を向ける。そこには、
「............冬至。」
携帯を握りしめて、こちらへ走ってくる冬至の姿。その後ろには慎悟くんもいて。
「おいっ!」
急速に力の抜ける身体。
傾く視界。
俺を見つけてくれたことのお礼が言いたいのに、もう瞼を開けるのも面倒で。
おやすみ、と。
小さく呟いた気がした。
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