もうちょっとメイクビリーブ
R
翌日、昼休み。
「ってことは俺は兄弟子だよね!?いやー俺も偉くなったなぁ」
昴が一頻り大笑いした後でそう言った。
お前はただの友達だろ…
「リュウも中谷に弱いよね。弟子とか、俺だったら意味わかんない」
俺だってわかんねぇよ…
とりあえず電話番号を聞かれて、教えるつもりなんてなかったのにチカラが勝手に教えてしまった。
なるべく関わりたくないのに…
「でも、その子もかわいそうですね。方言を使っただけでイジめられるなんて…」
転校生の言葉に大きく頷くチカラ。コイツら『他人は他人』って精神がないんだろうか?
少なくとも俺は、チカラさえ良ければどうでもいい。
「でも、夏樹だってうちの学校に来た時は結構…」
チカラが気まずそうに言う。確かに、転校生を何度か助けた覚えがある。あれもチカラに頼まれたんだったな…
「僕はチカラさんたちが助けてくれたからいいんです!!おかげで、先輩たちとも仲良くなれましたし…」
「夏樹くんはホント良い子だねぇ」
「俺、夏樹のそういう優しいところ好きだなー」
「だって、リュウくん」
……悪かったな、優しくなくて。
「あっ、師匠ー!!」
帰り道、チカラとの大切な時間の一つだって言うのに、今日も真木とかいうガキが待っていた。
「真木くん、こんばんはー」
「中谷さんも、お疲れ様です!!師匠、カバンお持ちしますよ!!」
「やめろ、気持ちわりぃ…」
真木の顔を見ると、頬が少し腫れてる。やっぱりコイツ、学校でも殴られてんだな…
「……お前、なんで反撃とかしないわけ?」
真木はキョトンとしたかと思うと、「ケンカしたことないんで…」と呟いた。
「はぁ?じゃあ、人殴ったことねぇの?」
「まぁ、そうなりますね」
「兄弟はいないの?俺、小さい頃は弟とよくケンカしたけど」
チカラが問うと真木は「妹しかいませんわー…」と嘆いた。
強いとか弱いとか、関係ねぇじゃん…
「殴られたら殴り返せば?イラッとこねぇの?」
「悔しいですけど、やり方わからへんしー…」
「……基本だけどよ、一回避けたら準備ができるだろ?」
「……どうやって?」
ダメだ、コイツが一番イラッとする。殴りたい……けど、また冷たくしてチカラに泣かれると困るし…
「真木くん、ほっぺ冷やした?他にもケガしてるとこあるし、うち来る?」
「いやぁ、そんな…」
「中谷!!」
知らねぇ男を部屋に呼ぶなんて、本当に無防備すぎるだろ!!
俺以外の男は上げるなって、あれほど…
「あ、それか東郷先輩のうちに行きましょうか?」
「はぁ!?」
「師匠のおうち、このへんなんですか?」
「そうだよー、こっちこっち」
な、中谷…
できればお前と昴以外、あげたくなかった…
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