君も詐欺師。
五
「千川先輩、おはようございますっ」
俺を絶望から救うすべは、もうどこにもない。
昨日コイツを無視していれば、俺は何も知らないバカなtsuki.信者でいられたんだ。騙されてても、そっちの方が幸せだった…
「……何」
「昨日のこと信じてもらえないと思って……台本持ってきました!!今日の分のアカリです!!」
月島が「ミュージックアイドルアカリ」と書かれた台本を俺に差し出した。廊下を行き交う生徒たちが俺を見てる。
それに気づいて、俺はとっさに人のいない場所を考えた。
「ちょっと、こっち来い」
呑気な顔した月島を連れて、屋上に続く階段に来た。ここなら誰も通らないはずだ。
「千川先輩……?」
「迷惑なんだよ。お前がtsuki.だなんて知りたくなかったし……もう興味ない」
「そんな……僕、本当に千川先輩のことが…」
「だから、俺はお前もtsuki.も…」
「なんでもします!!……千川先輩のためなら…」
なんなんだよ。そんなこと言われても困るだけだ。
別に月島にやってほしいことなんて、何も…
「……tsuki.の声で」
「えっ?」
「喘いでみろって言ったら、やんの?」
人間は思いもよらないことに出くわすと、思いもよらないことを言い出すものだ。
「……も、もちろんです!!」
バカか、俺は。
「じゃあ……やれよ、今」
そう言うと、月島は嬉しそうに頷いた。
そして、首を傾げる。
「ここで、ですか?」
「嫌ならいい。悪かったな」
「やっ!!やります!!」
台本を持ってきた時はあんなにヘラヘラしてた月島は、急に顔を真っ赤にした。結局恥ずかしいらしい。
「……あの、アダルトものは演じたことがないので…」
「知ってる」
「演技で出せないんです……実際に触りながらでも、いいですか?」
月島を見ると、両手をモゾモゾさせている。不快な気分もしたが、「好きにしろ」と返してしまった。
「ありがとうございます…」
月島が制服の上から自分の胯間をさすり出した。視線は俺をまっすぐ見つめている。
次第に呼吸が荒くなってきた。
「……ぁ、んっ…」
tsuki.だ。少し声が高くなっただけで完全にtsuki.になる。不思議な奴だな…
「はぁ……あ、あんっ……せ、んぱ…」
「俺の名前、知ってるか?」
「し、志央…」
俺は無言で頷いた。
月島の声はどんどんハッキリしてくる。とうとう下着から硬くなったモノを出してしごきだした。
「あぁん……あっ、志央……気持ちいい……志央ぉ…」
tsuki.が、俺の名前を呼びながら喘いでる。
事実は“後輩の男が目の前でオナニーしてる”だけなのに、俺の脳はなんて都合がいいんだろうか。
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