聖バレンタイン
チョコ会社の陰謀であることは重々承知だし、
何より今まではそこまで、
この日を意識したことは無かった、と言ってもまんざらではない。
―――――だが、今年は違う。
だから、わざわざ地球に帰らせて頂き、
こうして自宅のキッチンで悪戦苦闘しているのだ。
――――――貴方の為に…。
《受け取って、くれるかな？》
眞魔国にてバレンタイン〜漆黒の翼編〜
「一、二、三…。」
数を数えていく薫。
これは勿論、義理チョコの数。
本命一人に渡したいところだが、
一応、お世話になっているのだし、
ある程度の人間には渡すべきかと考えた。
(…大丈夫そうね。)
防水加工を済ませ、
家の庭の池から、眞魔国へ帰還した。
「おかえりなさいませ。」
「ウルリーケ、ごめんね。急に。」
我が侭を言って返してもらったのだ。
ウルリーケには当然、チョコを用意してきた。
「はい。」
「なんでしょうか？」
「ウルリーケには、いつもお世話になってるから。」
薫は小さな包みをウルリーケに差し出したが、ウルリーケは拒否した。
「頂けません！」
「良いの。貰って欲しい。」
「……ありがとうございます。」
頬を染めたウルリーケを見ていると、抱き締めたくなった。
(かわいい…。)
「…カオル様も頑張って下さい。」
ウルリーケは上目遣いに薫を励ました。
どうやらウルリーケにはお見通しだったようだ。
「……うん。」
そんな会話をしていると、ふと声をかけられた。
声の主は…
勝利！(勝利＆有利＆村田＆サラ)
眞王！(眞王＆グウェン＆ヴォルフ＆ギュンター)
コンラッド！(コンラッド＆ヨザック＆アーダルベルト)
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