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約の翼
仲の良い二人
「おい、触るんじゃねぇよ。俺は同情するのもされるのも嫌いなんだ」

「お二人は本当に仲が宜しいんですね」

「それ、仲がいいとは少し違うんじゃない……?」

 よしよし、と子供にするように頭を撫でるハロルドに、ヴィオラは鬱陶しそうに手を振る。仲が良いとは少し違う気がするのはノルンの気のせいだろうか。
 彼は言う。同情するのもされるのも嫌いだと。それはノルンも同じだ。聖人だから、命尽きるまで悪魔と戦うことを余儀なくされる。自ら望んだことではないが、同情して欲しいとは思わない。
 一方、ハロルドはヴィオラが嫌がっていても気にした風ではないよう。その辺りは流石彼だ。

「オレと同い年のくせに子供っぽくて、小さいんだよねえ」

「小さくて悪かったな。分かったから離せ」

 ハロルドと同い年ならば、二十一歳なのだろうが、彼の背はシグフェルズより少々低い。ヴィオラにしても触れて欲しくない話題のはず。勿論、ハロルドは知っていて言っているに違いない。からかわれたのが余程不快だったのか、ヴィオラの機嫌は最悪のよう。おまけに顔色も悪かった。もしかすれば具合でも悪いのだろうか。

「ヴィオラ、具合でも悪いの?」

「別になんでもねぇよ……」

 見たくないものを見せられた、と彼は呟くが、それがノルンの耳に入ることはない。こちらがいくら心配しても、本人が何でもないと言うのなら、それ以上言うことは出来ない。相手は子供ではなく、立派な大人なのだ。加えてヴィオラが張った予防線のようなものなのかもしれない。気さくに見えても、時折垣間見える闇は決して浅いものではないのだろう。
 悪魔を祓う聖職者でありながら、彼はグレンとは別の意味で聖職者らしくない。

「何でもないならいいけど、あまり無理しちゃ駄目だよ。体調管理も悪魔祓いの仕事だし、アテにしてるんだからね」

「……だから勝手にアテにすんじゃねぇよ。お前が大司教から頼まれたお守りだろ?」

 おい、とハロルドを半眼で睨みながらも、ヴィオラの顔色は随分良くなったよう。嫌そうな顔をしていたが、本心から嫌がっているようには見えなかった。お守り、とは自分たちのことだろう。確かに見習いである自分たちは、彼にとってお荷物同然なのかもしれないが。ほんの少し心外ではあったが、嫌そうにしながらも、どこか楽しそうなヴィオラを見ていると、文句を言う気にはならなかった。



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あきゅろす。
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