4-33 一実は家に行く前に、友達の家に寄ると言ってある場所に立ち寄った。 家にバイクは置いておけないそうで、その友人の車庫を間借りしているのだそうだ。 慣れた様子で家から友人を呼び出し、車庫で軽いメンテナンスをしている一実を少し遠くで見ていると、その友人がゆっくりと俺に近寄ってきた。 「アンタ、高校の友達?」 「そうだけど…。そっちは中学の友達?」 「もっと昔から。まぁ、所謂幼馴染ってやつかな」 彼はにっこりと笑いながらも、値踏みするような視線で俺を上から下まで一瞥した。 なんだかなぁ、と思う。 こういう視線はなかなかに居心地が悪い。 気をそらすように、嬉々としてバイクをいじっている一実に視線を移す。 「ってことは、アンタもお金持ち?」 「うんにゃ、一般家庭だよ。一実と一緒で、学業特待」 「へぇ、」 学業特待であると告げた瞬間、彼の視線が少しだけ緩んだ。 あまりにもその態度があからさまで、思わず笑う。 「金持ちは嫌い?」 「あんま好きじゃないね。まぁ、半分嫉妬」 「素直だ」 「惚れるなよ?」 ワザとらしく流し眼をして見せる彼に、アハハ、と声を立てて笑ってしまった。 その声に一実がこちらを振り返るが、何でもないと手を振ると、いぶかしげな顔をしながらも再びバイクに向き合った。 「どこまで聞いた?」 「なにが?」 「一実のコト」 「一実のこと?」 なんとも過保護な幼馴染のようだ。 小さくほおを緩めて、見当もつかないという様に首をかしげて見せると、彼は肩をすくめた。 「焦らすなよ。見た目に反して、アンタちょっと性格悪いな」 「失礼な。無害と評判だよ。」 「嘘つけ。一実は“無害そうだけどそうでもないヤツ”と友達になったって言ってたぜ」 「僕とは限らないじゃないのよ」 「いや、アンタだね。」 嫌にきっぱりと言い放たれて、思わず彼を見る。 ニヤリと楽しげに唇をゆがめて、彼は一実に聞こえないように僕の耳に唇を寄せて囁いた。 「一実が報告してきた友人は一人きりだ。すぐ見りゃわかる。一実は、アンタが好きでしょうがなさそうだから。」 [*前へ][次へ#] [戻る] |