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4-26

「カズ、キツネとおんなじがっこーなの?」


未だ床に座り込んだままで、下から見上げてくる灰色のあどけない瞳。
この瞳が冷たく鋭く色を変えることを僕は知っているけども、いつも僕に向けられるこの瞳はいつだって幼い色を灯したものだ。
まったく空気を読まずに、ふわふわした声で固まっていた雰囲気をぶち壊してくれたのは、先ほどまでわけもわからずぐずっていた銀の声だった。

がくん、と体の硬直が溶けて、手足に感覚が戻ってくる。
途端にぶわりと背中を冷や汗が伝って、大きく、肺から絞り出されたような息を大きく吐いた。
一気に空気を取り込んで、少しのめまいに襲われる。
そして、先ほどまでどうしようもないほどに拘束されていた視線は、打って変わって簡単に黒さんから逸らすことができて。
僕は、かすかに震える自分の指先を見つめた。

「・・・、そ、うだよ。偶然だけどね。」
「ふぅーん。」

滑り出た言葉は少しつっかえてしまったが、銀は気にしていないようだ。
そんな銀から視線を流し、早苗さんを見ると、安心したように息をついてこちらを見て笑っていて。
けれどその笑顔は少しこわばっていて、もしかしたら、銀が割って入ってこなかったら早苗さんが入ってくれようとしていたのかもしれない。

今日の僕のお目付け役だからな。
心配かけちゃったんだろうなぁ、申し訳ない。

すいません、という気持ちを込めて小さく笑って見せると、困ったような、怒っているような、けれど可笑しそうな。
そんな複雑な表情を浮かべて、早苗さんは肩をすくめて見せた。

そんな風に、早苗さんと視線だけでやり取りをしていると、くいくいと服の裾が引っ張られる。
視線をそちらへと移せば、口を尖らせ拗ねた銀の顔。



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