犬馬の心
1モノより思い出
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ったく。蘭の野郎…。
あれから最悪だった。
あれから…そう、蘭からのご褒美と称したキス…。
蘭の態度は相変わらずだが、俺は普通に出来るはずが無かったからだ。
それなのにアイツは何も考えずに、飯にしろって命令しやがって。
しかも中々直らない俺の赤面をからかって爆笑していた。
『なになに?もしかしてファーストキスだったの?』
そうで悪いか。
ファーストキスの味はレモン味だって信じてたっつーの。
俺だってな、ちゃんと憧れのシュチュエーションとかあったんだぞ。
放課後の教室トカ夏のグラウンドの木陰トカでだな、清楚な彼女の肩に手を添えてちゅっ、とかな!なんつって!(照)
なのに……
まじ最悪だ。
何が最悪って、アレしかないだろ。
いくら顔が可愛いからといっても蘭は正真正銘の男だっつー事だよ。
ファーストキスの相手が男ってさ、フツーに生きてたら、まず無いことじゃね?
ちょっと顔が怖くて背中によろしくない物があって生活環境がよくなかっただけで俺自身は至ってフツーの男子高生なわけよ。
それなのになんなのコレ。フツーの生活をしようとしていた俺に対してのこの仕打ち。
神は俺がキライなのか。
ふと思い出される唇への柔らかな感触。
しかしそれが同性のものだと言う事が俺を現実に連れ戻す。
……男。
ボキッ…
握っていたチョークに力が入り、黒板に白く跡を残して先端が欠けた。
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