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犬馬の心







「あ、あの、芹沢君…?もし、分からなかったら、ええ遠慮しないで言ってくれてかまわないよ、ほほ他にも分からない子は沢山居るから、ね?」

冷や汗を流し、おろおろしている数学の教師が出来る限り優しく、しかし震える声で言葉を掛けた。

「…いえ、判るっス」

地の底から聞こえるような太く低い声で答えた。
更にビビッた先生。
すんません。地声っス。

「そそそそうだよね!!芹沢君は頭良いものね!!!」

先生は最後にすみませんと小さな声で呟いた。

そんなにビビんなくても…。
だけど今のは完全に俺が悪い。
つい思い出してイライラしちまった。

ささっと回答を書いて席に戻った。
戻る際も、俺の荒れた心境を感じ取っていたクラスメイト達は、俺が何の不自由なく通れるようにサッと机を動かし、道をつくった。
目の前に花道が出来上がる。

はぁ…。やっちまった。



「犬真どーした??んなイライラしてさァ」

休み時間。
相変わらず空気を読まないタケルは俺の横の席を陣取り、肩に手を掛けて寄りかかってきた。
そんなだらだらで馴れ馴れしい態度のタケルを周りの生徒達はハラハラした目で見守っている。
そりゃそうだ。他の生徒からしたら俺はカウントダウンの始まった爆弾のようなものだから。
何時ブチギレて教室を血の海にするかわからないとか思ってんだろ。
んな事しねぇけどよ。

「別に。なんでもねーよ」

「ふーん。あ、昼に学食に行こうぜ」

「あー、良いけどなんで?」

俺達は夜に学食に行くことはあっても、昼飯は購買のパンで簡単に済ませることが多い。
まぁ、俺はここ2,3日蘭の見張り約にされてたから夕食も行ってなかったけどな。

建明にも最近会ってないし…まぁ良いか。





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