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犬馬の心







その後、しっかり者の貴一先輩のおかげで会議は無事終了。
解散後、議室に残って居るのは書類整理をする貴一先輩と後片付けをする俺だけになった。


(…はぁ…。)

昨日から俺の頭はアイツの事でいっぱい……。


芹沢…。
優しい奴だったなぁ。
2回も助けて貰っちゃった。
棚と大量の資料やら何やらから俺を庇って受け止めてくれて…。
大丈夫って言ってたけど…絶対痛かったよな…。

(……うわ。やばい、思い出しちゃった…)

芹沢と重なる様に床に倒れてしまった時の事を思い出して顔が熱くなった。
荷物の重さがより一層、二人を密着させ、俺の心臓はバクバクしっぱなしだった。
「大丈夫ッスか?」って耳元で言われた時には心臓が破けてしまうかと思ったくらいだ。

耳に掛かる芹沢の吐息と身体に響く低い声…。
あの薄い唇に触れたら、俺はどうなってしまうのだろう…。

(わああああ!!!!!な、何考えてるんだよぉー!!!)

「守?」

「けけけ決してき、、キスしたいとか、そんなこ…」

え…?
い、今声がしなかった?

「守、キスしたいんですか?」

振り向くと書類整理を整理していたはずの貴一先輩が真後ろに立っていた。

「ひゃああああ!!!!」

驚きのあまり、変な叫び声を出してしまった。目の前で叫ばれた先輩は両耳を押さえて叫び声に耐えている。

「わわわ!すみません、先輩!」

俺のしどろもどろな謝りにクスリと微笑んだ。

「今日の貴方は心ここにあらず、と言った感じでしたよ?」

貴一先輩は親指で下唇をなぞり、たじろぐ俺を覗き込んだ。先輩が唇をなぞるのは心配事がある時の癖。
優雅で上品なその動きで、先輩が俺を責めているわけではないことがわかる。
先輩は本気で俺を気に掛けているんだ。

「守、何かあるなら話してください。仲間じゃないですか」

先輩は俺に直ると、包み込むように俺の手を握った。真っ直ぐ向けられた視線。

「…う」

貴一先輩は俺の一番の憧れの人だ。
そんな人が俺の事を気に掛けてくれていると知れば言わない訳にはいかない…。
や、むしろ…先輩になら言える気がする。
この俺の胸にくすぶっている気持ちを。

俺は恥を忍んで口を開いた。

「…先輩、俺…」





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あきゅろす。
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